2014年10月14日火曜日

マージョラム | 精油類を買うときには注意して!(31)

マージョラム(Origanum majorana)油
 
 マージョラムは、シソ科のハナハッカ属の双子葉植物で、多年草または亜低木(一部が木質化する)。地中海沿岸のフランス・スペインなどが原産地で、25種類ほどあり、現在も、この地域で香味料にされ、また観賞用に植栽されたりしている。
英語で、スウィートマージョラム、フレンチマージョラムと呼ばれるOriganum majoranaがマージョラムの代表格になっている。
 
 学名 Origanum majorana Moench.
 別名 Majorana hortensis L.
 
 これのごく近縁種にハナハッカ(コモンマージョラム、ワイルドマージョラム、オレガノ、オリガナムとも称される)がある。これもマージョラムとよく似た多年草で、マージョラム同様、香味料にされ、観賞用にもされる。マージョラムとほとんど同一視されている。この学名はO. vulgareという。オレガノはイタリア料理・メキシコ料理に不可欠の香味料。
マージョラムもハナハッカも、草丈30〜60cm。葉にはいずれもよい香りがあり、食べるとやや苦みがあるが、いける味だ。マージョラムは、以前はマヨラナと呼んだ。
 
1980年代に日本にハーブブームがおこったとき、そのリーダー的な存在だった熊井明子氏は、ちゃんと「マージョラム」と正しく発音しておられたのに、その弟子の一人で、ハーブ界に影響力をもつある女性が、これを「マジョラム」という奇怪な呼び方をした。しかも、「ジョ」の部分に変に高いアクセントをつけて。以来、この誤った呼称が一般に広まってしまった。悪貨が良貨を駆逐したのだ。
 
だから、私はこのハーブの話を人の前でするときには、「マーーーーーーーージョラム」とホワイトボード、黒板いっぱいに書いている。「盗んだ棒を返せ!」といいながら。
 
このハーブは、日本には江戸末期に渡来した。マヨラナは、学名の属名(あるいは種小名)をとったものである。これを「マヨナラ」などと、とんでもない発音をまじめでする連中が、20年くらい前までいた。それもたいてい男性だった。こんな奴らは絶対インポだったに相違ない。失礼、ちょっと興奮してしまった。英国人にも、この学名の種小名をmarjoranaなんて書くバカがいるからご注意下さい。
 
・精油の抽出
 マージョラム、ハナハッカともに葉と花の咲いた先端とを水蒸気蒸留して精油を得る。
 
マージョラムには、上述のスウィートマージョラム(O. majorana)のほか、スパニッシュマージョラムと呼ばれるハーブがある。これは、ハナハッカ属のスウィートマージョラムと違い、イブキジャコウソウ属で、学名はThymus capitatus(これはタイムの近縁植物。これもアロマテラピーで用いられる)という。
 
主要成分(%で示す)
          スウィート(フレンチ)マージョラム   スパニッシュマージョラム
 1,8-シネオール      0〜58               50〜62
 α-テルピネン       0                  1〜4
 γ-テルピネン       3〜16               0.4〜5
 テルピノレン       13〜19              10〜20
 α-テルピネオール     2〜6                2〜4
 テルピネン-4-オール    0〜30               0
 β-カリオフィレン     0〜2                0〜2
 
マージョラムには、スウィート・スパニッシュの両種とも、様々な種類があり、またケモタイプも多々あるので、それらの精油の成分にも、大きな変動がある。
 
・偽和の問題
 真正のスウィート(フレンチ)マージョラム油に、ティートリー油を加えたり、他の精油を脱テルペン処理して、本来捨てるはずのテルペン分をたっぷり添加したり、フレンチマージョラム油にスパニッシュマージョラム油やタイム油などを大量に混入させたり、スパニッシュマージョラム油自体をフレンチマージョラム油と詐称して販売する悪党も多い。いわゆるブランド品など、もっともヤバいといってもよい。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで2.2g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて濃度6%で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  スウィートマージョラム油については、まだ報告例がない。スパニッシュマージョラム油では光毒性はなかった。
 
・作用
 薬理作用 スウィートマージョラム油は、モルモットの回腸で、in vitroで、軽微な鎮痙作用を示した。
 
 抗菌効果 スウィートマージョラム油は、各種の細菌にたいして殺菌・抗菌作用を示したとする報告がいろいろとなされている。フレンチ・スパニッシュの両精油にこうした効果があるとされてきた。しかし、リステリア菌(食中毒をおこす細菌)には不活性だったとの報告例もあるので、今後、さらに研究を重ねていく必要がある。
 
 抗真菌効果 スウィートマージョラム油・スパニッシュマージョラム油ともに、中程度ないし強力な作用を発揮する。
 
 抗酸化作用 試験に供したマージョラム油により(スウィート、スパニッシュ両種とも)ゼロから強力と言えるまでの効果を示すので、一概にはいえない。
 
 その他の作用 CNVの波形では、スウィートマージョラム油は鎮静効果を示した。
 
付記
 スウィートマージョラムには「制淫作用」があるとかまびすしく言われるが、本当だろうか。この精油が副交感神経を興奮させ、血管を拡張させ、結果として血圧を降下させて気分を鎮静させることは事実であるが、それがそのまま性的強迫感を抑制し、性器の過敏を鎮めるまでの効果につながるかどうかを、しかと見極めるにはもう少しコントロール(実験対照)をおいた各種の動物実験などを十分に行うべきだと私は考える。性急な結論は控えよう。ことに人間のような複雑な存在を考える場合には特にそうだろう。

2014年9月30日火曜日

芳樟(ホウショウ、芳〔ホウ〕) | 精油類を買うときには注意して!(30)

芳樟(または芳)(Cinnamomum camphora var. nominale)油
 
 学名 Cinnamomum camphora var. nominale Hayata subvar. hosho Hatusima
 別名 C. camphora L. Ness & Ebermeier, C. camphora Sieb.
 
 カンファー(クスノキ)の亜変種のクスノキ科の常緑樹。中国南部から台湾に分布している。クスノキに比べて、花も果実も小型である。日本では薩摩半島南部で36haほど栽培されている。英名はHo leaf。葉と小枝とを蒸留して精油を採取する。
 原産地は日本、ブラジルと言われるが、こいつは少々怪しい。やっぱり中国南部だろう。現在では、華南、台湾が主産地になっている。ホウショウ油はクスノキすなわちカンファーの精油に比較して上品な香りの精油で、高級香料とされる。むかし、台湾が日本の領地になっていた時代には、この精油は年間300トンから400トンも同地で生産されていた。カンファー油が日本人の手で台湾で広く生産され、セルロイド原料として欧米に盛んに輸出されていたころ、原木のクスノキにホウショウがまじってしまうことがあった。ホウショウにはカンファー分が含まれず、リナロール分ばかりが多いため、この木がカンファー油の質を落とすとしてカンファー油生産者たちに憎まれ、こいつは芳樟じゃねえ、「臭樟」だなどとののしられ、鼻つまみものにされたことも再三あった。
 
主要成分(%で示す)
 リナロール       85〜95
 リナリルアセテート   2〜5
 各種のテルペン類化合物 0.1〜0.5
 
注) ごらんのように、この精油には、カンファー分が全く含まれていない。クスノキすなわちカンファーには、カンファーが50.8%も含有されている。組成成分がカンファー油と全く異なることがおわかりと思う。
また、毒性が低いため、欧米で一時、食品添加物として承認されたこともあった。
 
・偽和の問題
 合成したリナリルアセテート、合成リナロールで真正精油が増量されることがよくある。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで3.8g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて濃度10%で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  まだ試験例は報告されていない。
 
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、鎮痙作用を示した。
 
 抗菌効果 各種の細菌を殺したり、その増殖を抑制する力がかなり強力。
 
 抗真菌効果 強力。
 
 抗酸化力 みるべきものがある。
 
付記
 現在、Aniba rosaeodora、すなわちローズウッドが乱伐のせいで絶滅が危惧され、真正のローズウッド油は、まず入手できない。これは、サンダルウッド同様に原木を伐採してしまうせいである。現在、このローズウッド油(ボア・ド・ローズ油)に代えてそれに成分的に近く、しかも木を伐採せず葉・小枝のみを利用するこのホウショウ油を用いようと主張する人びとが増加しつつあり、環境保護面で明るい展望が開けつつある。ただし、香りが違うのはいかんともしがたい。しかし、このホウショウ油もよい香りである。
また、精油としても近縁のカンファーの精油よりも、ホウショウ油ははるかに毒性が低い点も評価される。生理的に適切な用量なら、こども・妊婦の使用も何ら問題はない。 
なお、このホウショウ油が有毒であるために、ローズウッド油の代用にはならないと主張する人が一部にいるが、これは全くの間違いである。

2014年9月23日火曜日

ベルガモット Citrus bergamia | エッセンスを買うときには注意して!(29)

ベルガモット(Citrus bergamia)エッセンス
 
 ベルガモットは、南国産のミカン科の常緑低木である。
 レモンに近いカンキツ類。ダイダイの近縁植物。白い香りの良い花を咲かせる。シトロンとも近縁である。ちなみに、フランス人はレモンのことをシトロンと呼ぶ。そこでいわゆるレモネードのことをシトロナードと俗称する。しかしレモンとシトロンとは別種のカンキツ類で、レモンはCitrus limon、シトロンはC. medicaである。
 イタリア南部、シチリア島などが主要な産地で、数百年前からベルガモットエッセンスが利用され、輸出されてきている。
 英名はBergamot orange、中国名は香檸檬(シャンニンメン)。
 
学名 Citrus bergamia Risso
    Citrus aurantium L. ssp. bergamia Wright & Arn.
 
エッセンスの抽出 ベルガモットの果皮を圧搾してエッセンスを抽出する。ベルガモット油というと、果皮を蒸留したベルガモット精油と混同されるので、果皮を冷搾したものはかならずエッセンスと呼んでほしい。
 
主要成分(%で示す) 産地やその年の気候などの要因でこの数値は変動することは言うまでもない。
 リナリルアセテート  23〜25
 リモネン       19〜38
 リナロール      4〜29
 α-テルピネン     4〜13
 β-テルピネン     3〜13
 
微量成分として注目に値するのは、
①フロクマリン(およそ0.44%)が光毒性の原因物質である。FCFベルガモット油というのは、この果皮を水蒸気蒸留してとる精油であり、エッセンスと違って、フロクマリンが分解してしまうため、光毒性がない。
②痕跡量成分類
 (-)-グアイエノール、ネロリドール、(+)-スペツレノール、ファルネソール、β-シネンサール
 
これらがベルガモットエッセンスの芳香に大きく寄与する。このエッセンスはオーデコロンによく利用され、石けんの香料としてもひろく用いられる。日本でも小豆島などで試験的に栽培されるが、およそ商売にならない。経済的にひきあわないのである。
 
・偽和の問題
 安いエッセンスには、合成したリナリルアセテート、リナロールが入っている。
 合成リモネンも往々添加される。
 また合成したものではないが、ビターオレンジエッセンス、ライムエッセンス、さらに、いずれも合成したシトラール、テルピニルアセテート、ジエチルフタレートなどが増量剤として加えられることも多い。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>10g/kg(経口)
   ウサギで>20g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて30%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  ベルガモットエッセンス(その他のカンキツ類エッセンスも、程度の差はあるが)を皮膚につけて日光あるいはサンベッドのUV光線にあたると、皮膚にシミができる。ベルロック皮膚炎という。ベルロックはフランス語でペンダントの意味で、このエッセンスを配合した香水をつけた女性に、この形の皮膚炎が生じたことからこう命名された。配合されたエッセンスの量に依存して皮膚炎ないしヤケド様症状はさまざまである。
 同じカンキツ類エッセンスといっても、その症状の度合いは、ベルガモットエッセンスが最高最悪で、つぎにライムエッセンス、ビターオレンジエッセンス、レモンエッセンス、グレープフルーツエッセンス、スウィートオレンジエッセンス、タンジェリンエッセンス、マンダリンエッセンス、タンジェロエッセンスという順になる。
フロクマリンの含有量が0.0075パーセント以下なら問題は特にないとマリア・リズ=バルチン博士は指摘している(つまりベルガモット以外のエッセンスは、フロクマリン含量が格段に少ないのでさほど心配するにはあたらないのだ)。
また、良質のベルガモットエッセンスを肌につけて、日光やUV光源などにあたらずに8時間たてば、もうトラブルを恐れることはない。11時間も待つ必要などない。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、最初痙攣を惹起したが、その後鎮痙作用を示した。
 
 抗菌効果 各種の細菌にたいして、かなり強力な効果を発揮した。蒸散させた場合にも、相当な殺菌力があった。
 
 抗真菌効果 あまり強くない。
 その他   CNVの波形を調べて、ベルガモットエッセンスは鎮静効果があることがわかった。また、抗酸化作用もかなり強いことが判明している。 このエッセンスは、疱疹のウイルスを抑制する力があるので、帯状疱疹(ヘルペス)の痛みを和らげることができる。また、ベルガモットは気分を晴朗にすることでも有名である。

2014年9月16日火曜日

ベチバー | 精油類を買うときには注意して!(28)

ベチバー(Vetiveria zizanoides)油
 
 イネ科の単子葉植物。多年草。熱帯アフリカ、アジア、オーストラリア、アフリカ、南米などに、およそ10種が分布する。
 
学名:Vetiveria zizanoides Staph.
   V. odorata Virey
   Andropogon muricatus
 
 英名ベチバー(vetiver)で広く呼ばれる。ベチベル(ソウ)といったころもあった。
 
精油の抽出:この草(1年に2度収穫できるところもある)の根および根茎を採取して日光にあてて干したものを水蒸気蒸留して抽出する。
      生育地によって、その芳香と化学組成とに大きな差異がある。
 
 
主要成分(%で示す)
 ベチベロール     10
 ベチベロン      9
 ベチベロンエステル類 各種各様
 
 (注)ベチバー油は、米国のFDA(食品医薬品局)で食品添加物に認定されている。
 
・偽和の問題
 サイベラスのような他の草本の根とともに蒸留され、精油の量を増やす手が使われている。他の植物からとったベチベロールが加えられることもある。合成したカリオフィレン、シダーウッドの成分、アミリス油が添加されることも多い。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて8%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  なし。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、弱い鎮痙作用が生じた。
 
 抗菌効果 ベチバー油を蒸散させて、5種類の細菌のうち1種に有効であった。
 
 抗真菌効果 弱い。 
 
英国のアロマテラピー研究家、マギー・ティスランドは、毎日乳房を美しく保つためにツバキ油のキャリヤーにこのベチバー油あるいはゼラニウム油を混ぜてマッサージをしているそうである。

2014年9月11日木曜日

精油のシナジー効果を利用した精油の新しいレシピ(1)

①精油のシナジー効果について
 現在、フランスならびに、とくにスイス(そのフランス語圏)において、各種の精油のシナジー(英語:synergy、フランス語でsynergie〔シネルジー〕)効果を活用したブレンドを利用する、アロマテラピー実践家が増えてきている。
シナジー、あるいはシネルジーは「ある一つの目的を達成するために、複数のファクターを恊働させること」と定義できる。
したがって、精油のシナジー(シネルジー)という場合には、それぞれの精油成分の秩序のとれた、複合的な各種の働きが、極めて明確な一つまたはそれ以上の効果を的確に発現させることを含意する。
 
基本的なシナジー効果
 a) 鎮静:神経筋、自律神経系鎮静、蓄積され停滞したエネルギーの分散、筋肉拘縮弛緩
 b) 強壮:精油を適用した箇所のエネルギーの喚起、あるいはその部分へのエネルギーの供給。脊柱上部(頸部と肩甲骨上部)にブレンド精油を適用する。神経系ならびに心臓・呼吸器関連神経系へのエネルギーの充足を目的とする。
 c) 刺激:上述のb)とほぼ同じ目的であるが、c)ではとくに脊柱下部(その下部背面・仙腰椎)の強壮をめざす。腎臓の排泄・消化機能のエネルギー充填をめざす。
 
これのほか、個人個人の体質に応じたシナジー効果、体組織の刺激と強化とをめざすシナジー効果の発現を目的とする。
 
 
②現実にブレンド精油を適用する箇所は、そのほかさまざまある。
①でのべたのは、あくまでも現在行われているトリートメントの基本的な概略を示したもので、実際には、足裏の反射ゾーンや太陽神軽叢(みぞおち)の部分その他にも、ブレンド精油を適用して、めざす効果の発現を図る。
 
今回のレシピ
 ストレスは、さまざまな病気の原因となる。これはストレスが主として自己免疫力、自己治癒力の低下を招来するためである。
 今回は特に、ストレスに起因する心理的なわだかまりがいつも心を離れず、うつうつとしたり、夜もよく眠れぬような状態におちいったときに適用するとよいレシピである。
 
④注意事項
 ストレスに悩まされている場合、以下の精油を、それぞれホホバ油のキャリヤーに5〜6%の濃度に稀釈し、これらを合わせる。そして、この含剤を胸部全体に、また太陽神経叢(みぞおち)に、また両足の裏の「腎臓」の反射ゾーンにそれぞれ1日に3回ないし4回、1回に10〜20分かけてよくすりこむ。
使用する精油は以下のとおり。
 
 Chamaemelum nobile(ローマンカモミール)油
 Hyssopus officinalis(ヒソップ)油
 Ocimum basilicum(バジル)油
 Pelargonium graveolens(ローズゼラニウム、ゼラニウム、ニオイテンジクアオイ)油
 Thymus vulgaris linaloliferum(タイム・リナロールケモタイプ)油
 
これらの精油について若干の説明を加えたい。
 
 ローマンカモミール油
   ストレス関連活性成分として ー
    テルペンアルコール類 :トランスビノカルベオール、ファルネソール、脂肪族アルコール類(75〜80%)
    アセテート類     :イソアミルブチレート、イソブチルイソブチレート、その他
    モノテルペンケトン類 :ピノカルボン(13%)
    セスキテルペンケトン類:3−デヒドロノビリン
   などがあげられる。
   特性として ー
    鎮痙、中枢神経系鎮静(強力)
    抗炎症(かなり強力)
    抗神経性ショック(強力)
   禁忌はない。
 
 ヒソップ油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペン類(<20%):α,β-ピネン(それぞれ3.66%、2.78%)、カンフェン(2.46%)、ミルセン(2.07%)、リモネン(5%)
    セスキテルペン類(<8%):α-コパエン、γ-ブルボネン、他
    テルペンエステル類(<2%):リナリルアセテート(1.2%)、ラバンズリルアセテート、ゲラニルアセテート
    オキシド類(およそ60%):トランスリナロールオキシド(57%)、他
   特性として ー
    交感神経および太陽神経叢への作用
   指示 ー
    神経性抑うつ症(強力)、苦悶、心拍異常
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 バジル油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペン類(2%):α,β-ピネン
    セスキテルペン類:イソカリオフィレン、β-カリオフィレン、β-エレメン
    非テルペンおよびテルペンアルコール類(65%)
    フェノールメチルエーテル類(10〜15%)
    テルペンオキシド類(6%)
   特性として ー
    神経強壮(かなり強力)
   指示 ー
    神経性抑うつ症、無力症
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 ローズゼラニウム油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペノール類(55%):リナロール(3.8%)、シトロネロール(44.5%)、ゲラニオール(6.5%)
    テルペンエステル類(25%)
    モノテルペン類
    テルペンオキシド類
   特性として ー
    全身的強壮、鎮痛
   指示 ー
    神経疲労、無力症、他
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 タイム(リナロールケモタイプ)油
   ストレス関連活性成分として ー
    モノテルペノール類:リナロール(60〜80%)、テルピネン-1-オール-4
    テルペンエステル類:リナリルアセテート
   特性として ー
    強壮、神経強壮(中枢神経系、延髄、小脳)
   指示 ー
    神経疲労(強力)、ブドウ球菌性腸炎(強力)、他
   禁忌 ー
    生理学的用量においては、知られていない。
 
 
付記①
 私は、知り合いの心療内科の医師2名(いずれも大学病院の准教授)、メンタルクリニックの院長1名、ならびに有名製薬会社の研究開発部長1名に、これらの精油の外用によって、万が一、そのトリートメントを自分の体にたいしておこなう人間が、たとえばストレスに起因した疾病を患っていて、医師から処方された薬剤を摂取している場合、それと望ましくない相互作用を惹起しないかどうか尋ねてみた。
 この人々は、ストレス性の各種疾患を列挙して、消化器系、各種神経系、循環器系、呼吸器系、生殖器系、泌尿器系、内分泌系などにストレスが原因して発症し得るほとんどすべての疾患において、これらの精油のブレンドがまず危険ではない、少なくともその精油類が100%天然自然のもので、化学的増量剤など一切配合されていないかぎり、それらの精油が体内に浸透する量を考慮して、まず心配は不要であるとの見解を一致して示した。むろん、この医師たちはアロマテラピーについて、すべて一定の理解をしている人びとである。
 
付記②
 アロマテラピー用精油を販売しているショップは、全国に多数ある。そうした店の責任者には、責任感が強く、精油とその効果とについて不断に勉強を怠らない人もいるが、中には残念ながら、精油についての知識が乏しく、精油につけてある成分表、分析表すら理解できず、詳しく聞いても何一つ答えられず、回答を求める顧客に逆ギレして、ヤクザまがいの対応をする店長がたくさんいることも確かである。最近、マスメディアで話題になった認知症予防騒動をふまえて、このことをハッキリ申し上げておく。
人間には本来自己免疫力、自己治癒力がある。そうしたものを強化すること自体は現行の薬事法・医師法になんら抵触するものではない。そこで、これから紹介する各種のブレンド用精油は、かならず下記の注文先から購入して頂きたい。他店でお買いになった精油について生じた結果については、当方としても責任のとりようがないからだ。
ここで言っておくが、現在有名なブランドの精油は9割以上は、増量剤などが加えられたニセものである。そうしたことを十分にご考慮願いたい。
 
 問い合わせ先・注文先(ご注文の精油の在庫がない場合もあるかも知れない。その場合は、少々時間を頂きたい。何らかの原因で入手不能になるケースもあろう。ここでは一定のブランド品を売ることを目的とせず、世界で入手できるもっとも信頼できる精油をさがしてお取り次ぎすることをめざしているからである)
 
 
繰り返すが、アロマテラピー用の精油は100%天然のものでなくてはならない。
このブレンドを使用するにあたって、現在、何らかの疾患で医師の処方した薬剤を摂取している場合は、かならず医師の見解を問い、それに従うこと。
精油は購入後、出来るだけ早く使い切ること(冷暗所に保存して頂きたい)。
精油は各種の不自然な処理をうけたものであってはならない(脱テルペン、調合、過度の高圧高温下での抽出など)。

2014年9月2日火曜日

フランキンセンス(乳香) | 精油類を買うときには注意して!(27)

フランキンセンス(Boswellia carterii)油
 
 フランキンセンス(ニュウコウジュ)は、カンラン科ボスウェリア属の常緑の低木あるいは小高木。アフリカ・アラビア半島・インドなどに数種類が分布している。
 ジャン・バルネ博士は、アラビア半島のオマーン産のものを特に上質と考えていたそうだ。
 
学名 Boswellia carterii Birdw.(乳香樹〔ニュウコウジュ〕)
 
 英名はfrankincence(フランキンセンス)、 olibanum(オリバナム)。アラビア半島からトルコにかけて分布する。この樹(樹皮)からとれる芳香性のガム樹脂を乳香、フランキンセンス、オリバナムと称する。幹に切り傷をつけると汁液がミルクのような色を呈して滲み出すところからこの名がある。もっとも、「乳香」という語は中国語で、薫陸香(くんろくこう)の異名もある。古代から薫香として用いられた。
 
主産地はソマリア、アラビア南部ドラマウト地方など。没薬とともに古代オリエントの代表的薫香。
 
西暦前4〜3世紀の古代ギリシャの哲学者で「植物誌」「植物原因論」などを書いたテオプラストスもこれについて触れ、西暦1世紀の大プリニウス(プリニー大公ではない!)の「博物誌」にもこの植物についての記載が見られる。
新約聖書で、これが没薬・黄金とともに幼な子イエスに捧げられたエピソードはあまりにも有名(マタイによる福音書)。
 
精油の抽出 樹皮から滲出した涙滴状あるいはその他の形状をしたオレオ ガム レジン(含油樹脂)を水蒸気蒸留して得る。
 
主要成分(%で示す)
 α-ピネン       1.0(ないし43)アデン産
 α-ツエン       0〜2(インド産のものは、61にも及ぶ)
 p-シメン       0.1(アデン産のものは8に達する)
 リナロール      0.2(エリトレア産のものは3にもなる)
 n-オクチルアセテート 0〜5(エリトレア産は>5)
 n-オクタノール    0〜4(エリトレア産ではおよそ8)
 
 この成分は、産地によって大幅な変動がある。国際的なグレードの基準は、ピネン含量で決められる。最高級のものは、その含有量が37〜42%のフランキンセンスである。もっとも、インド産のものはピネン含量が極めて低いにもかかわらず非常によい香りを放つことで有名。α-ツエン分のためであろう。
フランキンセンスは食品添加物としても使われる。
 
 
・偽和の問題
 フランキンセンス油の成分の多くが、合成したもので代用される。とくに品質基準物質のα-ピネンを化学合成品でごまかした製品がでまわっている。こうしたニセモノには、くれぐれもご用心のほどを。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて8%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  まだ試験例は報告されていない。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、強烈な痙攣惹起作用を示した。
 
 抗菌効果 フランキンセンス油は、多種多様な細菌にたいして非常に強力な殺菌・抗菌作用を示す。
 
 抗真菌効果 弱い。
 
 抗酸化作用 認められない。
 
(注)ダニエル・ペノエル博士らによると、この精油は免疫機能不全に起因する各種症状に有効とのことである。 

2014年8月26日火曜日

プチグレン | 精油類を買うときには注意して!(26)

プチグレン(Citrus aurantium L. ssp. amara、別名 C. bigaradia)油
 
 プチグレンという植物は存在しない。俗にビターオレンジ、あるいはビガラディアレモン、ビガラディアオレンジと呼ばれるミカン科のカンキツ類果樹の葉・小枝を、ときにはそのほかのカンキツ類の同じ部位を水蒸気蒸留して抽出した精油を、一般にプチグレン油と称する。
 
 フランス、イタリア、アルジェリア、チュニジア、モロッコ、スペイン、パラグアイなどで生産される。
 ミカン科の果樹は、東南アジアあるいはインドなどが原産地と考えられており、12世紀以降、ヨーロッパにポルトガル人・スペイン人らにより導入された。
 
 ミカン科の果実は、非常に多い。日本でもウンシュウミカン、イヨミカンを筆頭に、ネーブルオレンジ、スウィートオレンジ、ナツミカン、ポンカン、デコポン、キンカン、ブンタン、カボス、ユズ、スダチ、サンポウカン、シトロン(Citrus medica)、レモン(フランスではレモン〔C. limon〕のことをシトロンという)、ハッサク、ベルガモット、イヨカン、ライム、サワーオレンジ、タンカン、タンジェリン、マンダリン、沖縄のシークヮーサーなど、いくつもこの仲間があげられる。交配すると、すぐに雑種ができる(美味かどうかは別として)。
 最近では、ユズのエッセンスが高知県で生産されている。私はこれをイカのシオカラにちょっとたらして食べるのが大好きだ。一度ためしてごらんなさい。ヤミツキになるから。
 
主要成分(%で示す。これはC. aurantium L. ssp. amaraの成分だが、それも、産地により大幅な変動がある。一つの目安とされたい)
 リナロール     19〜20
 リナリルアセテート 46〜55
 ネリルアセテート  2〜3
 α-テルピネオール  4〜8
 ゲラニオール    2〜4
 ミルセン      1〜6
 
注) C. aurantium L. ssp. amara以外のミカン科果実を併用したり、あるいは代用としたりすることが多いため、その成分も、同じ「プチグレン」といいながら、大幅に製品によって異なり、当然その香りもちがってくる。いわんや偽和品においておやである。
 
・微小成分について
 プチグレン油には、400種以上の成分が含まれる。今後の研究で、この数はさらに増えるだろう。それがプチグレン油の特異な香りの源になっている。私は南仏グラースで、ビターオレンジの葉をとって、揉んで香りを嗅いだが、あの香りこそ、ほんもののプチグレン油の香りだったと、いまにしてつくづく思う。
 
これの微小成分としてβ-ダマスケノン、β-イオノン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、それにα-テルピニルアセテートなどがあげられる。これらは、薬効にはさして寄与するものではないが、これらもプチグレン油の香りを形成するのに大きく貢献する。
 
・偽和の問題
 プチグレン油の偽和には、レモングラス油がよく利用される。レモングラス油をプチグレン油と詐称して売るヤカラもいる。また、合成したシトラール、レモン油なども偽和・増量のためによく使われる。
また、プチグレン油自体も、もっとずっと高価なネロリ油の偽和に使われる。プチグレン油をネロリ油だといって販売するメーカーもたくさんある。
同じ果樹の花を使うか、葉・小枝を用いるかの差だけなので、こんなインチキはかんたんにできるわけだ。
 
petit grain(プチグレン)は、フランス語で「小さい粒」という意味。この精油を顕微鏡でのぞいて見ると、小さい粒々がたくさん浮いていることから、この名ができたとされる。また、その他の説もいろいろある。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで>5g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ビターオレンジのプチグレン油では7%濃度で、またビガラディアレモンでは10%濃度でいずれも認められなかった。ただし、極めて稀な例として、200人の皮膚炎患者のうち1人が感作性を示したケースが報告されている。
 
 光毒性
  認められない。
 
注)プチグレン油は、ビガラディアレモンまたはビガラディアオレンジの葉・小枝を水蒸気蒸留して抽出する文字通りの精油である。だから、果皮を冷搾して得られるエッセンスではない。したがって、光毒性のあるフロクマリン類などは一切含まれない。
 
・作用
 薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、最初痙攣惹起作用をおこし、ついで鎮痙効果を示した。
 
 抗菌効果 各種細菌にたいして強力な抗菌作用を示したとの報告があるが、そうした作用は認められなかったとする学者もおり、最終的な結論は、まだ出ていない。
 
 抗真菌効果 一般的に、真菌の種類により強弱の差はあるものの抗真菌力はかなりあるといってよい。
 
 抗酸化力 微弱ながら、あるとされる。