芳樟(または芳)(Cinnamomum camphora var. nominale)油
学名 Cinnamomum camphora var. nominale Hayata subvar. hosho Hatusima
別名 C. camphora L. Ness & Ebermeier, C. camphora Sieb.
カンファー(クスノキ)の亜変種のクスノキ科の常緑樹。中国南部から台湾に分布している。クスノキに比べて、花も果実も小型である。日本では薩摩半島南部で36haほど栽培されている。英名はHo leaf。葉と小枝とを蒸留して精油を採取する。
原産地は日本、ブラジルと言われるが、こいつは少々怪しい。やっぱり中国南部だろう。現在では、華南、台湾が主産地になっている。ホウショウ油はクスノキすなわちカンファーの精油に比較して上品な香りの精油で、高級香料とされる。むかし、台湾が日本の領地になっていた時代には、この精油は年間300トンから400トンも同地で生産されていた。カンファー油が日本人の手で台湾で広く生産され、セルロイド原料として欧米に盛んに輸出されていたころ、原木のクスノキにホウショウがまじってしまうことがあった。ホウショウにはカンファー分が含まれず、リナロール分ばかりが多いため、この木がカンファー油の質を落とすとしてカンファー油生産者たちに憎まれ、こいつは芳樟じゃねえ、「臭樟」だなどとののしられ、鼻つまみものにされたことも再三あった。
・主要成分(%で示す)
リナロール 85〜95
リナリルアセテート 2〜5
各種のテルペン類化合物 0.1〜0.5
注) ごらんのように、この精油には、カンファー分が全く含まれていない。クスノキすなわちカンファーには、カンファーが50.8%も含有されている。組成成分がカンファー油と全く異なることがおわかりと思う。
また、毒性が低いため、欧米で一時、食品添加物として承認されたこともあった。
・偽和の問題
合成したリナリルアセテート、合成リナロールで真正精油が増量されることがよくある。
・毒性
LD50値
ラットで3.8g/kg(経口)
ウサギで>5g/kg(経皮)
刺激性・感作性
ヒトにおいて濃度10%で、これらはいずれも認められなかった。
光毒性
まだ試験例は報告されていない。
・作用
薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、鎮痙作用を示した。
抗菌効果 各種の細菌を殺したり、その増殖を抑制する力がかなり強力。
抗真菌効果 強力。
抗酸化力 みるべきものがある。
付記
現在、Aniba rosaeodora、すなわちローズウッドが乱伐のせいで絶滅が危惧され、真正のローズウッド油は、まず入手できない。これは、サンダルウッド同様に原木を伐採してしまうせいである。現在、このローズウッド油(ボア・ド・ローズ油)に代えてそれに成分的に近く、しかも木を伐採せず葉・小枝のみを利用するこのホウショウ油を用いようと主張する人びとが増加しつつあり、環境保護面で明るい展望が開けつつある。ただし、香りが違うのはいかんともしがたい。しかし、このホウショウ油もよい香りである。
また、精油としても近縁のカンファーの精油よりも、ホウショウ油ははるかに毒性が低い点も評価される。生理的に適切な用量なら、こども・妊婦の使用も何ら問題はない。
なお、このホウショウ油が有毒であるために、ローズウッド油の代用にはならないと主張する人が一部にいるが、これは全くの間違いである。
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