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2015年7月7日火曜日

ティートリー油についてもっと詳しく-2

この記事は、前回の「ティートリー油についてもっと詳しく-1」の続きです。

以上のほかに、セスキテルペン類が10種以上(その総量は0.2%)、酸化セスキテルペン類が4種、未知の成分が20種以上(0.1%)含まれている。市販のティートリー油には、ヘキサノール、アリルヘキサノエート、カンファー、ピペリトンが添加されていることが多い。

ティートリー油は、通常、皮膚に適用され、皮膚から体内に吸収される。
一般に分子のサイズが小さいほど、皮膚に吸収されやすい。したがって、ティートリー油は、たとえばオリーブ油などよりはるかに経皮吸収されやすい。

ティートリー油は、未希釈のまま皮膚にすりこむと、数分のうちに皮膚内部に吸収される。この吸収されるスピードは、皮膚の温度に依存し、皮膚温が高いほど吸収される速度は高まる。肌が暖かいほど、毛孔は開き、皮脂腺・汗腺などの活動も盛んになり、血流も勢いが増大する。
ティートリー油は、組成成分の協働・相乗効果により、いっそうその吸収される速度がアップされる。

ティートリー油も、質のよいものとよくないものとが市販されているのが現状である。ここで、平均的なティートリー油のMIC値(微生物の最小発育阻止濃度)を示したい。ティートリー油は大半の病原性のグラム陰性菌、グラム陽性菌ならびに真菌にたいして、0.25~1.0%v/v(体積濃度)のレンジで効果を示す。

In vitroでの数百回に及ぶ試験により、ティートリー油(<シネオール分<5%、テルピネン-4-オール分>40%のもの)は、下記のものを含む広いスペクトラムの微生物に効果を示す極めて効果的な精油であることがわかった。

・グラム陰性菌(ならびにそれに有効なティートリー油量をv/vで示す)
Escherichia coli (大腸菌) 0.25-0.5
Klebsiella pneumoniae (肺炎桿菌) 1.0-2.0
Citrobacter spp. (腸内細菌科の一属でクエン酸を炭素源として利用
する運動性細菌類)
0.5-1.0
Shigella sonnei (ゾンネ赤痢菌) 0.5
Proteus mirabilis (プロテウス属菌) 0.5-1.0
Legionella spp. (レジオネラ属の肺炎菌類) <0.75-1.0
Pseudomonas aeruginosa (シュードモナス属の緑膿菌) 2.0-5.0
Pseudomonas fluorescens (シュードモナス属の細菌。
土・水・腐敗した食物などに見出されるもの)
5.0
Vibrio fluvialis (ビブリオ属の食中毒菌) 0.625

・グラム陽性菌
Staphylococcus aureus (黄色ブドウ球菌。
中毒性ショック症候群をおこし、それに伴って、
腎・肝・中枢神経の各種症状を惹起し、また
蜂窩織炎、膿血症、肺炎、髄膜炎、心内膜炎などを
生じさせる病原性菌)
0.25-1.25
Staphylococcus epidermidis (表皮ブドウ球菌) 0.5-2.5
Listeria monocytogenes (リステリア菌) 0.75
Micrococcus luteus (髄膜炎菌の原因菌) 0.75

・真菌類
Trichophyton mentagrophytes (毛瘡白癬菌。
イヌ、ウマ、ウサギ、マウス、ラット、キツネ、
ヒトなどで皮膚糸状菌症を発症させる真菌)
0.75
T.rubrum (紅色白癬菌。足白癬や股部白癬、
爪の感染症の原因真菌)
0.5
Aspergillus niger (黒色アスペルギルス。
病原性をもつことは稀。外耳道にみられる)
1.0
Aspergillus flavus (黄色アスペルギルス。
ヒトや動物類に侵襲性アスペルギルス症をおこす)
0.25-0.75
Candida albicans (カンジダアルビカンス。
体内の微生物叢のバランスが崩れたり、
自己免疫力が低下したときに、粘膜感染症、
心内膜炎、敗血症、髄膜炎を含む
重い致命的な多様な疾患を引きおこす)
0.25-1.25
Microsporum canis (イヌ小胞子菌。
イヌ・ネコの白癬の主要となり、ヒトにも感染する)
1.0
Microsporum gypseum (石膏状小胞子菌。
イヌ・ウマの皮膚糸状菌症の原因となる)
1.0
Penicillium spp. (ペニキリウム属。
ペニシリンを産生するものもあれば、
病原性のものもある)
0.75

(注)抗真菌力の強い精油はあまりないので、その意味でもとくにティートリー油の存在は貴重である。

2015年6月26日金曜日

ティートリー油についてもっと詳しく-1

ティートリーというオセアニア原産の木本植物から抽出された精油は、この高木自体がヨーロッパ人に知られてからの歴史も浅く、香料原料とされてこなかったこともあり、アロマテラピーでもまだまだ、それにふさわしい扱いをうけていないように思う。
そこで、このティートリー油について、いくつか思いつくままに、それの特色、注目すべき点、身近な利用法などについて、2回にわたって載せてみようと考えている。

フトモモ科(Myrtaceae)には、何千もの種・亜種が含まれる。この科の植物のほとんどが、エッセンスを収めたエッセンス嚢を有する芳香を放つ葉をもつ。
マートル(ギンバイカ)、ニアウリ、ベイラム(ピメンタ)、カユプテ、クローブ、そしてユーカリ、ティートリーなどがこの科に属する。

ティートリーは、フトモモ科に属するMelaleuca属(コバノブラッシノキ属)の樹木の一種で、コバノブラッシノキ属には、150種にもなるティートリーの各種がある。
この中でもっもと有名なのがMelaleuca cajuputi(カユプテ)とMelaleuca quinquenervia(ニアウリ)であり、いずれも殺菌作用で名高い。しかし、それに次いで有名なMelaleuca alternifolia(ティートリーのスタンダードになる種)の精油には、広いスペクトラムのひときわパワフルな殺菌力がある。

ティートリーは、オーストラリアのニューサウスウェールズの比較的狭小な地域に生育する。
このほかの地区でも、この植物は育たないわけではないが、それから抽出した精油が殺菌力においてはるかに弱いのは、なぜだろうか。

学名のMelaleuca alternifoliaについて考えてみよう。Melaは「黒い」、「ダーク」なという意味、leuca(文法上leuconが原形)は「白い」を意味する。この樹木の外観からきた名である。黒を思わせる濃緑の葉と白い幹との色の対比を思いうかべてほしい。種小名のalternifoliaは「葉が交互についている」ということである。

ティートリー油の成分は、1968年に12種が、1978年に48種がつきとめられた。現在はさらに多くの成分の存在が判明しつつある(100種をはるかに超している)。これらの成分はいずれも協働的・相乗的に作用して、ティートリー油の有効性を担保している。その有効性には、他の精油類にはみられぬユニークなものがある。

ティートリー油には、テルペン類、ピネン類、シメン類、テルペン系シネオール類、セスキテルペン類、セスキテルペンアルコール類が含まれ、さらに植物には通常含まれない少なくとも4種の特殊な組成成分が見出されている。それはビリジフロレン(0.95%)、β-テルピネオール(0.25%)、L-テルピネオール(痕跡量)、アリヘキサノエート(痕跡量)である。
原木をランダムに選んで、葉を採取して蒸留してみても、たとえばシネオール含量には2%から60%ないしそれ以上のひらきがある(植物学的にはすべて同一の原木なのにである)。

このティートリー油の主要成分の一つ、1.8-シネオールは、ご存じのとおりユーカリ油に多量に含まれている成分である。これがユーカリ油のカンファーに似た、いかにもユーカリらしい香りに貢献している。ティートリー油のシネオール分が異常に多いときには、そのティートリー油はユーカリ油で偽和されている可能性がある。シネオールは皮膚に浸透しやすい特性がある。これが腫れものなどに有効なのだが、15%を超す含有量だと、皮膚刺激作用を示し、アレルゲンとなる。

この成分に関することは、あとで改めて述べることとして、いまわかっているティートリー油の主要な成分をまずあげておきたい。もちろんこれは一つの目安である。

成分(%で示す)
α-ピネン 2.5      γ-ムウロレン 痕跡量
α-p-ジメチスチレン 痕跡量      グロブロール 0.2
レドール 痕跡量 ビリジフロール 0.1
ロシフォリオール 痕跡量 スパツレノール 痕跡量
cis-p-メント-2-エン-1-オール 0.1 テルピネン-4-オール 40
α-ブルネセン 痕跡量 カンフェン 痕跡量
α-ツエン 0.9 β-ピネン 0.3
α-アモルフェン 痕跡量 p-シメン-8-オール 痕跡量
リナロール 痕跡量 サビネン 0.2
α-クベベン 痕跡量 α-フェランドレン 0.3
α-イランゲン 痕跡量 1.9-シネオール 痕跡量
cis-サビネンハイドレート 痕跡量 リモネン 1.0
β-フェランドレン 0.9 1.8シネオール 0.1
α-グルユネン 0.2 トランス-ピペリトール 痕跡量
テルピノレン 3.2 クベノール 0.1
メンチュオイゲノール 痕跡量 β-カリオフィレン 0.1
アロマデンドレン 1.4 β-グルユネン 0.1
β-エレメン 0.1 δ-カジネン 1.2
アロ-アロマデンドレン 0.3 α-フムレン 痕跡量
ビリジフロレン 1.0 α-テルピネオール 2.3
α-ムウロレン 0.1 トランス-p-メント-2-エン-1-オール 0.2
パルストロール 痕跡量 ビシクロドルマクレン 0.1
γ-シメン 2.8 ミルセン 0.5
トランス-サビネンハイドレート 痕跡量 cis-ピペリトール 痕跡量
カジナ-1.4-ジエン 0.1 α-テルピネン 10.4
カラメネン 0.1 ネロール 痕跡量
α-コパエン 痕跡量 トランス-6-オシメン 痕跡量
1.2.4-トリヒドロオキシ-p-メンタン 痕跡量