2014年10月14日火曜日

マージョラム | 精油類を買うときには注意して!(31)

マージョラム(Origanum majorana)油
 
 マージョラムは、シソ科のハナハッカ属の双子葉植物で、多年草または亜低木(一部が木質化する)。地中海沿岸のフランス・スペインなどが原産地で、25種類ほどあり、現在も、この地域で香味料にされ、また観賞用に植栽されたりしている。
英語で、スウィートマージョラム、フレンチマージョラムと呼ばれるOriganum majoranaがマージョラムの代表格になっている。
 
 学名 Origanum majorana Moench.
 別名 Majorana hortensis L.
 
 これのごく近縁種にハナハッカ(コモンマージョラム、ワイルドマージョラム、オレガノ、オリガナムとも称される)がある。これもマージョラムとよく似た多年草で、マージョラム同様、香味料にされ、観賞用にもされる。マージョラムとほとんど同一視されている。この学名はO. vulgareという。オレガノはイタリア料理・メキシコ料理に不可欠の香味料。
マージョラムもハナハッカも、草丈30〜60cm。葉にはいずれもよい香りがあり、食べるとやや苦みがあるが、いける味だ。マージョラムは、以前はマヨラナと呼んだ。
 
1980年代に日本にハーブブームがおこったとき、そのリーダー的な存在だった熊井明子氏は、ちゃんと「マージョラム」と正しく発音しておられたのに、その弟子の一人で、ハーブ界に影響力をもつある女性が、これを「マジョラム」という奇怪な呼び方をした。しかも、「ジョ」の部分に変に高いアクセントをつけて。以来、この誤った呼称が一般に広まってしまった。悪貨が良貨を駆逐したのだ。
 
だから、私はこのハーブの話を人の前でするときには、「マーーーーーーーージョラム」とホワイトボード、黒板いっぱいに書いている。「盗んだ棒を返せ!」といいながら。
 
このハーブは、日本には江戸末期に渡来した。マヨラナは、学名の属名(あるいは種小名)をとったものである。これを「マヨナラ」などと、とんでもない発音をまじめでする連中が、20年くらい前までいた。それもたいてい男性だった。こんな奴らは絶対インポだったに相違ない。失礼、ちょっと興奮してしまった。英国人にも、この学名の種小名をmarjoranaなんて書くバカがいるからご注意下さい。
 
・精油の抽出
 マージョラム、ハナハッカともに葉と花の咲いた先端とを水蒸気蒸留して精油を得る。
 
マージョラムには、上述のスウィートマージョラム(O. majorana)のほか、スパニッシュマージョラムと呼ばれるハーブがある。これは、ハナハッカ属のスウィートマージョラムと違い、イブキジャコウソウ属で、学名はThymus capitatus(これはタイムの近縁植物。これもアロマテラピーで用いられる)という。
 
主要成分(%で示す)
          スウィート(フレンチ)マージョラム   スパニッシュマージョラム
 1,8-シネオール      0〜58               50〜62
 α-テルピネン       0                  1〜4
 γ-テルピネン       3〜16               0.4〜5
 テルピノレン       13〜19              10〜20
 α-テルピネオール     2〜6                2〜4
 テルピネン-4-オール    0〜30               0
 β-カリオフィレン     0〜2                0〜2
 
マージョラムには、スウィート・スパニッシュの両種とも、様々な種類があり、またケモタイプも多々あるので、それらの精油の成分にも、大きな変動がある。
 
・偽和の問題
 真正のスウィート(フレンチ)マージョラム油に、ティートリー油を加えたり、他の精油を脱テルペン処理して、本来捨てるはずのテルペン分をたっぷり添加したり、フレンチマージョラム油にスパニッシュマージョラム油やタイム油などを大量に混入させたり、スパニッシュマージョラム油自体をフレンチマージョラム油と詐称して販売する悪党も多い。いわゆるブランド品など、もっともヤバいといってもよい。
 
・毒性
 LD50値
   ラットで2.2g/kg(経口)
   ウサギで>5g/kg(経皮)
 
 刺激性・感作性
  ヒトにおいて濃度6%で、これらはいずれも認められなかった。
 
 光毒性
  スウィートマージョラム油については、まだ報告例がない。スパニッシュマージョラム油では光毒性はなかった。
 
・作用
 薬理作用 スウィートマージョラム油は、モルモットの回腸で、in vitroで、軽微な鎮痙作用を示した。
 
 抗菌効果 スウィートマージョラム油は、各種の細菌にたいして殺菌・抗菌作用を示したとする報告がいろいろとなされている。フレンチ・スパニッシュの両精油にこうした効果があるとされてきた。しかし、リステリア菌(食中毒をおこす細菌)には不活性だったとの報告例もあるので、今後、さらに研究を重ねていく必要がある。
 
 抗真菌効果 スウィートマージョラム油・スパニッシュマージョラム油ともに、中程度ないし強力な作用を発揮する。
 
 抗酸化作用 試験に供したマージョラム油により(スウィート、スパニッシュ両種とも)ゼロから強力と言えるまでの効果を示すので、一概にはいえない。
 
 その他の作用 CNVの波形では、スウィートマージョラム油は鎮静効果を示した。
 
付記
 スウィートマージョラムには「制淫作用」があるとかまびすしく言われるが、本当だろうか。この精油が副交感神経を興奮させ、血管を拡張させ、結果として血圧を降下させて気分を鎮静させることは事実であるが、それがそのまま性的強迫感を抑制し、性器の過敏を鎮めるまでの効果につながるかどうかを、しかと見極めるにはもう少しコントロール(実験対照)をおいた各種の動物実験などを十分に行うべきだと私は考える。性急な結論は控えよう。ことに人間のような複雑な存在を考える場合には特にそうだろう。

この記事は参考になりましたか?

少しでも参考になればSNSでシェアしてもらうと嬉しいです。
   ↓ ↓ ↓

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿