フランキンセンス(Boswellia carterii)油
フランキンセンス(ニュウコウジュ)は、カンラン科ボスウェリア属の常緑の低木あるいは小高木。アフリカ・アラビア半島・インドなどに数種類が分布している。
ジャン・バルネ博士は、アラビア半島のオマーン産のものを特に上質と考えていたそうだ。
学名 Boswellia carterii Birdw.(乳香樹〔ニュウコウジュ〕)
英名はfrankincence(フランキンセンス)、 olibanum(オリバナム)。アラビア半島からトルコにかけて分布する。この樹(樹皮)からとれる芳香性のガム樹脂を乳香、フランキンセンス、オリバナムと称する。幹に切り傷をつけると汁液がミルクのような色を呈して滲み出すところからこの名がある。もっとも、「乳香」という語は中国語で、薫陸香(くんろくこう)の異名もある。古代から薫香として用いられた。
主産地はソマリア、アラビア南部ドラマウト地方など。没薬とともに古代オリエントの代表的薫香。
西暦前4〜3世紀の古代ギリシャの哲学者で「植物誌」「植物原因論」などを書いたテオプラストスもこれについて触れ、西暦1世紀の大プリニウス(プリニー大公ではない!)の「博物誌」にもこの植物についての記載が見られる。
新約聖書で、これが没薬・黄金とともに幼な子イエスに捧げられたエピソードはあまりにも有名(マタイによる福音書)。
精油の抽出 樹皮から滲出した涙滴状あるいはその他の形状をしたオレオ ガム レジン(含油樹脂)を水蒸気蒸留して得る。
・主要成分(%で示す)
α-ピネン 1.0(ないし43)アデン産
α-ツエン 0〜2(インド産のものは、61にも及ぶ)
p-シメン 0.1(アデン産のものは8に達する)
リナロール 0.2(エリトレア産のものは3にもなる)
n-オクチルアセテート 0〜5(エリトレア産は>5)
n-オクタノール 0〜4(エリトレア産ではおよそ8)
この成分は、産地によって大幅な変動がある。国際的なグレードの基準は、ピネン含量で決められる。最高級のものは、その含有量が37〜42%のフランキンセンスである。もっとも、インド産のものはピネン含量が極めて低いにもかかわらず非常によい香りを放つことで有名。α-ツエン分のためであろう。
フランキンセンスは食品添加物としても使われる。
・偽和の問題
フランキンセンス油の成分の多くが、合成したもので代用される。とくに品質基準物質のα-ピネンを化学合成品でごまかした製品がでまわっている。こうしたニセモノには、くれぐれもご用心のほどを。
・毒性
LD50値
ラットで>5g/kg(経口)
ウサギで>5g/kg(経皮)
刺激性・感作性
ヒトにおいて8%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
光毒性
まだ試験例は報告されていない。
・作用
薬理作用 モルモットの回腸で、in vitroで、強烈な痙攣惹起作用を示した。
抗菌効果 フランキンセンス油は、多種多様な細菌にたいして非常に強力な殺菌・抗菌作用を示す。
抗真菌効果 弱い。
抗酸化作用 認められない。
(注)ダニエル・ペノエル博士らによると、この精油は免疫機能不全に起因する各種症状に有効とのことである。
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