前回にひきつづいて、アロマテラピーで使用される精油の原料植物の主要なものをピックアップして、そのフランス語名と学名とを順不同に挙げる。
レモングラス(イーストインディアン)(仏名)lemongrass 〔レモングラス〕/(学名)Cymbopogon flexuosus
マンダリン(仏名)mandarine 〔マンダリーヌ〕/(学名)Citrus reticulata
マージョラム(仏名)marjolaine 〔マルジョレーヌ〕marjolaine à coquilles 〔マルジョレーヌ・ア・コキーユ]とも称する。/(学名)Origanum majorana
カモミール(ジャーマン)(仏名)camomille allemande 〔カモミーユ・アルマンド〕、matricaire 〔マトリケール〕とも呼ぶ/(学名)Matricaria recutita
ティートリー(仏名)melaleuque à feuilles alternes 〔ムラルーク・ア・フィユ・アルテルヌ〕/(学名)Melaleuca alternifolia
ニアウリ(仏名)melaleuque pentanerve 〔ムラルーク・パンタネルヴ〕/(学名) Melaleuca quinquenervia
メリッサ(仏名)mélisse officinale 〔メリス・オフィシナル〕citronnelle 〔シトロネル〕とも俗称。/(学名) Melissa officinalis
ペパーミント(仏名)menthe poivrée 〔マント・ポワブレ〕/(学名)Mentha piperita
スペアミント(仏名)menthe verte 〔マント・ヴェルト〕/(学名)Mentha viridis, M. spicata
ナツメグ(仏名)muscade 〔ミュスカード〕、正確にはnoix de muscade 〔ノア・ド・ミュスカード〕/(学名)Myristica fragrans
没薬(ミルラ)(仏名)myrrhe 〔ミール〕、正確にはmyrrhe amère 〔ミール・アメール〕 /(学名)Commiphora molmol
マートル(仏名)myrte commun 〔ミルト・コマン〕/(学名)Myrtus communis
ネロリ(ビガラディアオレンジ基原)(仏名)néroli bigarade 〔ネロリ・ビガラード〕/(学名)Citrus aurantium ssp. aurantium
乳香(オリバナム、フランキンセンス)(仏名)encens 〔アンサン〕またはoliban 〔オリバン〕、あるいはencens indien [アンサン・アンディアン〕/(学名)Boswellia carterii
オレンジ(ビガラディアオレンジ)エッセンス(仏名)oranger bigaradier 〔オランジェ・ビガラディエ〕/(学名)Citrus aurantium ssp. aurantium
オレンジ(スウィート)エッセンス(仏名)oranger doux 〔オランジェ・ドゥー〕/(学名)Citrus sinensis
グレープフルーツエッセンス(仏名)pamplemousse 〔パンプルムース〕/(学名)Citrus
paradisi
パチュリ(仏名)patchouli 〔パチュリ〕/(学名)Pogostemon cablin
パセリ(仏名)persil 〔ペルシ〕/(学名)Petroselinum sativum
パイン(スコッチ)(仏名)pin sylvestre 〔パン・シルヴェストル〕/(学名)pinus sylvestris
ラべンサラ(仏名)ravensare aromatique 〔ラヴァンサル・アロマティク〕/(学名)Ravensara aromatica
ローズマリー(仏名)romarin 〔ロマラン〕、正確にはromarin offinale 〔ロマラン・オフィシナル〕/(学名)Rosmarinus officinalis
バラ(ダマスク)(仏名)rose de damas 〔ローズ・ド・ダマ〕/(学名)Rosa damascene
サンダルウッド(仏名)bois de santal 〔ボア・ド・サンタル〕あるいは、santal blanc 〔サンタル・ブラン〕/(学名)Santalum album
ファー(モミ)(仏名)sapin blanc 〔サパン・ブラン〕またはsapin argenté 〔サパン・アルジャンテ〕/(学名)Abies alba
ウィンターセーボリー(仏名)sarriette des montagnes 〔サリエット・デ・モンターニュ〕/(学名)Satureja montana
サマーセーボリー(仏名)sarriette des jardins 〔サリエット・デ・ジャルダン〕/(学名)Satureja hortensis
セージ(仏名)sauge 〔ソージュ〕、正確にはsauge offinale 〔ソージュ・オフィシナル〕/(学名)Salvia officinalis
クラリセージ(仏名)sauge sclarée 〔ソージュ・スクラレ〕/(学名)Salvia slarea
ブラックペパー(仏名)poivre noir 〔ポアヴル・ノワール〕/(学名)Piper nigrum
テレビン(仏名)térébenthine 〔テレバンティーヌ〕/(学名)Pinus pinaster
ツーヤ(仏名)thuya occidental 〔テュヤ・オクシダンタル〕/(学名)Thuya occidentalis
タイム(仏名)thym 〔タン〕、正確にはthym vulgaire 〔タン・ヴュルゲール〕/(学名)Thymus vulgaris
レモンバーベナ(仏名)verveine citronnée 〔ヴェルヴェーヌ・シトロネ〕/(学名)Lippia citridora
ベチバー(仏名)vétiver 〔ヴェティヴェール〕/(学名)Vetiveria zizanoides
イランイラン(仏名)ylang-ylang 〔イランイラン〕、ilang-ilangとも表記/(学名)Cananga odorata
以上です。お疲れさまでした。正しい発音は、前にも申したようにカタカナで示すことはムリなので、私に電話くだされば、それを正しくお伝えしますよ。でも早朝・深夜は、ごかんべんください。また移動中は出られません。
高山林太郎 直通電話番号:080-5424‐2837
2015年4月5日日曜日
2015年3月28日土曜日
精油の原料植物のフランス語名‐その1
精油・エッセンス、あるいはアブソリュートの原料となる植物名は、日本ではおおむね英語名で呼ばれる。でも、これらをフランス語では何というかと尋ねられることが往々ある。アロマセラピストとしてアロマサロンを開設しようとする人が、店名にしようとしてか、そんなことを私に聞いてきたときもあった。
そこで、主要な芳香植物のフランス語名と学名とを合わせてご紹介してみようと思う。しかし、カナで原語の発音を正確に表現するのは所詮、不可能である。あくまでも「近似的」なものと考えて頂きたい。順不同に記すことにする。
アンジェリカ (仏名)angélique alchangélique 〔アンジェリク・アルカンジェリク〕 /(学名)Angelica archangelica (天使ange 〔アンジュ〕の中でも上位のクラスである、上から2番目の天使をarchange 〔アルカンジュ〕という。ミカエル、ガブリエル、ラファエルなど。その形容詞がarchangéliqueである。)
バジル (仏名)basilic 〔バジリク〕 /(学名)Ocimum basilicum
ベルガモット (仏名)bergamote 〔ベルガモット〕 /(学名)Citrus aurantium ssp.bergamia
カモミール(ローマン) (仏名)camomille romaine 〔カモミーユ・ロメーヌ〕 /(学名)Chamaemelum nobile (camomille noble 〔カモミーユ・ノブル〕という仏名もある。)
カルダモン (仏名)cardamome 〔カルダモム〕 /(学名)Elettaria cardamomum
キャロット (仏名)carotte 〔カロット〕 /(学名)Daucus carota
シナモン(セイロン) (仏名)cannelle de Ceylan 〔カネル・ド・セラン〕 /(学名)Cinnamomum zeylanicum
キャラウェイ (仏名)carvi 〔カルヴィ〕 /(学名)Carum carvi
シダーウッド(アトランティック) (仏名)cèdre de l'Atlantique 〔セドル・ド・ラトランティク〕 /(学名)Cedrus atlantica
セロリ (仏名)céleri 〔セルリ〕 /(学名)Apium graveolens
レモン (仏名)citron 〔シトロン〕 /(学名)Citrus limon
レモングラス(ウェスト) (仏名)citronnelle 〔シトロネル〕、verveine des Indes 〔ヴェルヴェーヌ・デ・ザンド〕 /(学名)Cymbopogon citratus
コリアンダー (仏名)coriandre 〔コリアンドル〕 /(学名)Coriandrum sativum
クミン(仏名)cumin 〔キュマン〕 /(学名)Cuminum cyminum
サイプレス (仏名)cyprès toujours vert 〔シプレ・トゥージュール・ヴェール〕 /(学名)Cupressus sempervirens
エストラゴン(タラゴン) (仏名)estragon 〔エストラゴン〕 /(学名)Artemisia dracunculus
ユーカリ(レモン) (仏名)eucalyptus citronné 〔ユーカリプチュス・シトロネ〕 /(学名)Eucalyptus citriodora
ユーカリ (仏名)eucalyptus officinale 〔ユーカリプチュス・オフィシナル〕 /(学名)Eucalyptus globulus
ウィンターグリーン (仏名)gaulthérie 〔ゴルテリー〕 /(学名)Gautheria procumbens
ジュニパー (仏名)genévrier commum 〔ジュネヴリエ・コマン〕 /(学名)Juniperus communis
ゼラニウム(ローズ)(仏名)géranium rosat 〔ジェラニヨム・ロザ〕 /(学名)Pelargonium x asperum
ジンジャー (仏名)gingembre 〔ジャンジャンブル〕 /(学名)Zingiber officinale
クローブ (仏名)girofle 〔ジロフル〕 /(学名)Eugenia caryophyllata
ヘリクリサム (仏名)Hélichryse italienne 〔エリクリズ・イタリエヌ〕 /(学名)Helichrysum italicum
ヒソップ (仏名)hysope officinale 〔イゾプ・オフィシナル〕 /(学名)Hyssopus officinalis
ローレル (仏名)laurier noble 〔ロリエ・ノブル〕 /(学名)Laurus nobilis
スパイクラベンダー (仏名)lavande aspic 〔ラヴァンド・アスピック〕 /(学名)Lavandula latifolia, L.spica(フランスではかんたんに、aspic 〔アスピック〕とも称する)。
真正ラベンダー (仏名)lavande vraie 〔ラヴァンド・ヴレ〕 /(学名)Lavandula angustifolia(以前には、L.veraともいった)
ラバンジン (仏名)lavandin 〔ラヴァンダン〕 /(学名)Lavandula hybrida, L. intermedia
今回は、このくらいにしておきましょう。
そこで、主要な芳香植物のフランス語名と学名とを合わせてご紹介してみようと思う。しかし、カナで原語の発音を正確に表現するのは所詮、不可能である。あくまでも「近似的」なものと考えて頂きたい。順不同に記すことにする。
アンジェリカ (仏名)angélique alchangélique 〔アンジェリク・アルカンジェリク〕 /(学名)Angelica archangelica (天使ange 〔アンジュ〕の中でも上位のクラスである、上から2番目の天使をarchange 〔アルカンジュ〕という。ミカエル、ガブリエル、ラファエルなど。その形容詞がarchangéliqueである。)
バジル (仏名)basilic 〔バジリク〕 /(学名)Ocimum basilicum
ベルガモット (仏名)bergamote 〔ベルガモット〕 /(学名)Citrus aurantium ssp.bergamia
カモミール(ローマン) (仏名)camomille romaine 〔カモミーユ・ロメーヌ〕 /(学名)Chamaemelum nobile (camomille noble 〔カモミーユ・ノブル〕という仏名もある。)
カルダモン (仏名)cardamome 〔カルダモム〕 /(学名)Elettaria cardamomum
キャロット (仏名)carotte 〔カロット〕 /(学名)Daucus carota
シナモン(セイロン) (仏名)cannelle de Ceylan 〔カネル・ド・セラン〕 /(学名)Cinnamomum zeylanicum
キャラウェイ (仏名)carvi 〔カルヴィ〕 /(学名)Carum carvi
シダーウッド(アトランティック) (仏名)cèdre de l'Atlantique 〔セドル・ド・ラトランティク〕 /(学名)Cedrus atlantica
セロリ (仏名)céleri 〔セルリ〕 /(学名)Apium graveolens
レモン (仏名)citron 〔シトロン〕 /(学名)Citrus limon
レモングラス(ウェスト) (仏名)citronnelle 〔シトロネル〕、verveine des Indes 〔ヴェルヴェーヌ・デ・ザンド〕 /(学名)Cymbopogon citratus
コリアンダー (仏名)coriandre 〔コリアンドル〕 /(学名)Coriandrum sativum
クミン(仏名)cumin 〔キュマン〕 /(学名)Cuminum cyminum
サイプレス (仏名)cyprès toujours vert 〔シプレ・トゥージュール・ヴェール〕 /(学名)Cupressus sempervirens
エストラゴン(タラゴン) (仏名)estragon 〔エストラゴン〕 /(学名)Artemisia dracunculus
ユーカリ(レモン) (仏名)eucalyptus citronné 〔ユーカリプチュス・シトロネ〕 /(学名)Eucalyptus citriodora
ユーカリ (仏名)eucalyptus officinale 〔ユーカリプチュス・オフィシナル〕 /(学名)Eucalyptus globulus
ウィンターグリーン (仏名)gaulthérie 〔ゴルテリー〕 /(学名)Gautheria procumbens
ジュニパー (仏名)genévrier commum 〔ジュネヴリエ・コマン〕 /(学名)Juniperus communis
ゼラニウム(ローズ)(仏名)géranium rosat 〔ジェラニヨム・ロザ〕 /(学名)Pelargonium x asperum
ジンジャー (仏名)gingembre 〔ジャンジャンブル〕 /(学名)Zingiber officinale
クローブ (仏名)girofle 〔ジロフル〕 /(学名)Eugenia caryophyllata
ヘリクリサム (仏名)Hélichryse italienne 〔エリクリズ・イタリエヌ〕 /(学名)Helichrysum italicum
ヒソップ (仏名)hysope officinale 〔イゾプ・オフィシナル〕 /(学名)Hyssopus officinalis
ローレル (仏名)laurier noble 〔ロリエ・ノブル〕 /(学名)Laurus nobilis
スパイクラベンダー (仏名)lavande aspic 〔ラヴァンド・アスピック〕 /(学名)Lavandula latifolia, L.spica(フランスではかんたんに、aspic 〔アスピック〕とも称する)。
真正ラベンダー (仏名)lavande vraie 〔ラヴァンド・ヴレ〕 /(学名)Lavandula angustifolia(以前には、L.veraともいった)
ラバンジン (仏名)lavandin 〔ラヴァンダン〕 /(学名)Lavandula hybrida, L. intermedia
今回は、このくらいにしておきましょう。
2015年3月14日土曜日
ローズマリー|精油類を買うときには注意して!(42)
ローズマリー油
学名:Rosmarinus officinalis L.
学名は上記のとおりだが、P.フランコム氏は、これの「ケモタイプ」を3種あげ、それぞれに下記のような学名をあてている。すなわち、
ローズマリーは、シソ科マンネンロウ属の常緑小低木で、南欧地中海周辺に上掲の4種が生育している。和名はマンネンロウ、英語でrosemary、フランス語でromarin(ロマラン)、中国名は迷迭香(ミディエシャン)、ドイツ語でRosmarin(ロスマリン)、イタリア語でrosmarino(ロスマリーノ)、スペイン語でromero(ロメロ)という。
学名は、ラテン語のros marinus(海の露、海のしずく)、すなわち波がうちよせる岩場の近くにこの植物がむらがって生え、4~5月ごろに咲く薄紫の小さな無数の花々が、あたかも砕ける波のしぶきを連想させることからRosmarinusと命名されたらしい。ローズマリーとか、ロスマリンとかという名は、女性の名としてよく使われる。
この小低木は、高さ60~130㎝、葉は細長く、長さは3㎝ほど。葉の裏側には、びっしりとワタ毛が生えていて、葉がたくさんついた茎をかるく握ってスーッと滑らせると、てのひらに独特の爽やかな芳香が移る。これがローズマリーのエッセンスの香りである。この精油は、香料として広く利用される。また、ローズマリーはハーブの1種として、野菜料理、肉料理によい風味を添え、シチューやスープなどにも加えられる。
ローズマリーの花の蜂蜜は私の好物で、フランスに行ったときには、ラベンダーの蜂蜜とともに、よく味わっている。日本でも、モーリス・メッセゲのハーブティーを扱っているショップなどで、この手の蜂蜜が購入できるだろう(ユーカリの蜂蜜、ヒマワリの鮮黄色の蜂蜜、タイムの蜂蜜なんていうのもオツなものですよ、それぞれの植物の風味がちゃんと残っている)。
ヨーロッパでは、このローズマリーはハーブ薬として黄疸(おうだん)の治療に、また堕胎の目的などに使われ、さらに病気をもたらす瘴気(しょうき)を消し、悪魔を払うのに燻蒸剤として使用された。今日のチューインガムのように、この葉を噛んで口臭を消すのにも用いられた。
中国では迷迭香として、胃を健やかにし、各種の痛みを鎮めるなどの目的で薬用される。
日本には、文政年間(1818~1830)に入ってきた植物である。
原産地
フランス、イタリア、スペインなど地中海沿岸。今日ではロシア、中東などでも生育している。
精油の抽出
葉、あるいは木質化した部分をとり除いた花の咲いた先端・葉・茎の全体を水蒸気蒸留して精油を得る。
精油の化学成分(%で示す。各種のケモタイプにより大幅な差がある)
(注)
R. officinalis camphoriferumは、カンファーを30%も含み、カンフェンは22%、1,8‐シネオールは30%それぞれ含有する。
R. officinalis cineoliferumには、1,8‐シネオールが60%も含まれる。
R. officinalis verbenoniferumは、ベルベノンを37%、α‐ピネンを最高34%おのおの含有する。
R. pyramidalisについては、含まれる成分の正確な数値はまだ十分に把握されていない。ただ、1,8‐シネオール分、αおよびβ‐ピネン分の含量はかなり高いとみられる。
偽和の問題
少量のローズマリー油に合成したシネオール、各種のテルペン類(αおよびβ‐ピネン、カンフェンその他)、サイプレス油、カンファー油、ユーカリ油(Eucalyptus globulusおよびE. radiate)、ターペンタインの留分、合成テルピネオール、シダーウッドの留分などでうんと増量したものが市場に出回っている。低価格で入手できるスペインのローズマリー花の脱テルペン精油を添加して、高級感をかもしだすという手のこんだ詐欺行為をする業者もいる。いわゆるブランド品の精油など、もっともタチが悪いと心得られよ。喝!
毒性の問題
・LD50値
>5g/kg(経口)ラットにおいて
>5g/kg(経皮)ウサギにおいて
・刺激性・感作性
ヒトにおいて、10%濃度で皮膚に適用したが、これらはいずれも認められなかった。
・光毒性
まだ、この試験報告はない、しかし、真正ローズマリー油の成分からみて、この作用はあまり考えられない。
作用
・薬理学的作用
ローズマリー油は、モルモットの回腸で(in vitroで)著明な痙攣惹起作用を示した。しかし、逆説的に一定の平滑筋弛緩作用、鎮痙作用も看取された。ウサギを用いての試験で、その気管の平滑筋を弛緩させる効果が認められた。
・抗菌作用
ほとんどの細菌にたいして、きわめて強力。ただ、この精油を蒸散させた場合は、その効果はかなり落ちる。
・抗真菌作用
真菌の種類によって、弱から中程度の効果を示した。
・その他の作用
抗酸化作用は、さまざまなテストの結果、この精油には期待できないことが判明している。ローズマリー油は、マウスを刺激し、興奮させる作用を示した。CNVの波形の観察によって、この精油がヒトの脳にもマウスと同様の効果があることがわかった。でも、だからといって、ローズマリー油に記銘能力を向上させるとか、果ては認知症を予防したり治療したりする力があるなどと性急な結論を出すのは、つつしみましょう、どこかの大学の先生がた。…
また、癲癇患者はもとより、遺伝的にその素質のある人間にローズマリー油のオイルマッサージを施すと、その発作を惹起するとされている。なにせカンファー分が多いからね。
付記1
ヨーロッパでは、古代ギリシャの昔から、バラを花の女王と考える人びとが多い。古代ギリシャの美の女神アプロディーテー、古代ローマの美の女神ウェヌスを象徴する花として香り高く、色も美しいバラが選ばれたのも当然であった。こうしたヘレニズム文化と、そこに突如わりこんできたヘブライズム文化(ユダヤ教も母胎としたキリスト教的世界観を核とする文化)とのせめぎ合いが、のちのヨーロッパ文化を形成した。古代ギリシャ文化が後世のヨーロッパ文化に直結したものだなんていう奴には、ウソもいいかげんにしやがれ、とドヤしつけてやりたい。
ところで、カトリック教会は宣教の方便として聖書にもろくな記述がない「聖母マリア」なる1種の女神を発明した。けだし母親への慕情はsomething internationalだからだ。で、この女神を崇敬するためにささげるものとして、ユリの花が選ばれた。汚らわしい、淫乱な多神教の女神を賛えるバラなど、もってのほかだというわけである。しかし、rosemaryというコトバの誕生後、その語源とは関係なくrose + mary、すなわち聖母マリアとバラが結びつけられて考えられるようになり、バラがこの一神教では本来、存在してはならぬ「女神」の像や絵画などに添えられるようになった。これも一種の「ルネサンス」だろう。このことはハーブとしてそのローズマリー、アロマテラピー用精油としてのローズマリー油とは、直接結びつくものではないが、ちょっと私がつれづれなるままに連想した一席である。
付記2
シェークスピアの四大悲劇の1つ『ハムレット』で、忘れがたいセリフの一つに,復仇のために狂人を装ったハムレットにじゃけんに扱われ、なかば気がふれた哀れなオフィーリアのこういうことばがある。
“There’s rosemary, that’s for rememberance.”
(ローズマリーをどうぞ、忘れないで、というしるしよ)
中近世のヨーロッパのハーバリズム(植物療法)でも、これの香り、あるいは香りのもとのローズマリーが、記憶を留める効果があるとされていたようである。また疫病の蔓延防止(これは理解できる)、不老、魂の不滅化(これはあまりアテにはならない)の目的でローズマリーが使用された。
ローズマリーの花言葉は「変わらない愛と記憶」、「貞節・誠実」などである。どれもアテにならぬものばかりです。
付記3
なんでもそうだが、CO2抽出法にもポジティブな面とネガティブな面とがある。たとえばラベンダー油に含まれるリナリルアセテート、ジャーマンカモミール油に含有されるカマズレンはいずれも水蒸気蒸留中に一定の圧力と熱とのもとで、化学的に自然に生成する成分なので、CO2抽出法でとったこれらのアブソリュートには、リナリルアセテートもカマズレンも入っていない。だから、それらの成分のもたらす諸効果も全く期待できない。
しかし、ローズマリーのエッセンスは、CO2抽出法でとった場合、成分が変化しないので、なまのハーブそのままの成分が保持され、香りもローズマリー精油より格段によい。一度嗅ぐと、あっと驚くことうけあいである。ぜひ専門家にこの「効果」を臨床的に研究してほしいと願うこと切なり、だ。
ただし、原料植物が有機栽培・無農薬品でなければダメだが。
学名:Rosmarinus officinalis L.
学名は上記のとおりだが、P.フランコム氏は、これの「ケモタイプ」を3種あげ、それぞれに下記のような学名をあてている。すなわち、
- Rosmarinus officinalis L. camphoriferum(カンファーケモタイプ)
- R. officinalis L. cineoliferum(シネオールケモタイプ)
- R. officinalis L. verbenoniferum(ベルベノンケモタイプ)
ローズマリーは、シソ科マンネンロウ属の常緑小低木で、南欧地中海周辺に上掲の4種が生育している。和名はマンネンロウ、英語でrosemary、フランス語でromarin(ロマラン)、中国名は迷迭香(ミディエシャン)、ドイツ語でRosmarin(ロスマリン)、イタリア語でrosmarino(ロスマリーノ)、スペイン語でromero(ロメロ)という。
学名は、ラテン語のros marinus(海の露、海のしずく)、すなわち波がうちよせる岩場の近くにこの植物がむらがって生え、4~5月ごろに咲く薄紫の小さな無数の花々が、あたかも砕ける波のしぶきを連想させることからRosmarinusと命名されたらしい。ローズマリーとか、ロスマリンとかという名は、女性の名としてよく使われる。
この小低木は、高さ60~130㎝、葉は細長く、長さは3㎝ほど。葉の裏側には、びっしりとワタ毛が生えていて、葉がたくさんついた茎をかるく握ってスーッと滑らせると、てのひらに独特の爽やかな芳香が移る。これがローズマリーのエッセンスの香りである。この精油は、香料として広く利用される。また、ローズマリーはハーブの1種として、野菜料理、肉料理によい風味を添え、シチューやスープなどにも加えられる。
ローズマリーの花の蜂蜜は私の好物で、フランスに行ったときには、ラベンダーの蜂蜜とともに、よく味わっている。日本でも、モーリス・メッセゲのハーブティーを扱っているショップなどで、この手の蜂蜜が購入できるだろう(ユーカリの蜂蜜、ヒマワリの鮮黄色の蜂蜜、タイムの蜂蜜なんていうのもオツなものですよ、それぞれの植物の風味がちゃんと残っている)。
ヨーロッパでは、このローズマリーはハーブ薬として黄疸(おうだん)の治療に、また堕胎の目的などに使われ、さらに病気をもたらす瘴気(しょうき)を消し、悪魔を払うのに燻蒸剤として使用された。今日のチューインガムのように、この葉を噛んで口臭を消すのにも用いられた。
中国では迷迭香として、胃を健やかにし、各種の痛みを鎮めるなどの目的で薬用される。
日本には、文政年間(1818~1830)に入ってきた植物である。
原産地
フランス、イタリア、スペインなど地中海沿岸。今日ではロシア、中東などでも生育している。
精油の抽出
葉、あるいは木質化した部分をとり除いた花の咲いた先端・葉・茎の全体を水蒸気蒸留して精油を得る。
精油の化学成分(%で示す。各種のケモタイプにより大幅な差がある)
1,8-シネオール | 7-60 |
ミルセン | 0-10 |
α‐ピネン | 3-34 |
β‐ピネン | 1-8 |
p‐シメン | 0-3 |
カンファー | 3-30 |
ベルベノン | 15-37 |
ボルネオール | 1-12 |
ボルニルアセテート | 2-3 |
(注)
R. officinalis camphoriferumは、カンファーを30%も含み、カンフェンは22%、1,8‐シネオールは30%それぞれ含有する。
R. officinalis cineoliferumには、1,8‐シネオールが60%も含まれる。
R. officinalis verbenoniferumは、ベルベノンを37%、α‐ピネンを最高34%おのおの含有する。
R. pyramidalisについては、含まれる成分の正確な数値はまだ十分に把握されていない。ただ、1,8‐シネオール分、αおよびβ‐ピネン分の含量はかなり高いとみられる。
偽和の問題
少量のローズマリー油に合成したシネオール、各種のテルペン類(αおよびβ‐ピネン、カンフェンその他)、サイプレス油、カンファー油、ユーカリ油(Eucalyptus globulusおよびE. radiate)、ターペンタインの留分、合成テルピネオール、シダーウッドの留分などでうんと増量したものが市場に出回っている。低価格で入手できるスペインのローズマリー花の脱テルペン精油を添加して、高級感をかもしだすという手のこんだ詐欺行為をする業者もいる。いわゆるブランド品の精油など、もっともタチが悪いと心得られよ。喝!
毒性の問題
・LD50値
>5g/kg(経口)ラットにおいて
>5g/kg(経皮)ウサギにおいて
・刺激性・感作性
ヒトにおいて、10%濃度で皮膚に適用したが、これらはいずれも認められなかった。
・光毒性
まだ、この試験報告はない、しかし、真正ローズマリー油の成分からみて、この作用はあまり考えられない。
作用
・薬理学的作用
ローズマリー油は、モルモットの回腸で(in vitroで)著明な痙攣惹起作用を示した。しかし、逆説的に一定の平滑筋弛緩作用、鎮痙作用も看取された。ウサギを用いての試験で、その気管の平滑筋を弛緩させる効果が認められた。
・抗菌作用
ほとんどの細菌にたいして、きわめて強力。ただ、この精油を蒸散させた場合は、その効果はかなり落ちる。
・抗真菌作用
真菌の種類によって、弱から中程度の効果を示した。
・その他の作用
抗酸化作用は、さまざまなテストの結果、この精油には期待できないことが判明している。ローズマリー油は、マウスを刺激し、興奮させる作用を示した。CNVの波形の観察によって、この精油がヒトの脳にもマウスと同様の効果があることがわかった。でも、だからといって、ローズマリー油に記銘能力を向上させるとか、果ては認知症を予防したり治療したりする力があるなどと性急な結論を出すのは、つつしみましょう、どこかの大学の先生がた。…
また、癲癇患者はもとより、遺伝的にその素質のある人間にローズマリー油のオイルマッサージを施すと、その発作を惹起するとされている。なにせカンファー分が多いからね。
付記1
ヨーロッパでは、古代ギリシャの昔から、バラを花の女王と考える人びとが多い。古代ギリシャの美の女神アプロディーテー、古代ローマの美の女神ウェヌスを象徴する花として香り高く、色も美しいバラが選ばれたのも当然であった。こうしたヘレニズム文化と、そこに突如わりこんできたヘブライズム文化(ユダヤ教も母胎としたキリスト教的世界観を核とする文化)とのせめぎ合いが、のちのヨーロッパ文化を形成した。古代ギリシャ文化が後世のヨーロッパ文化に直結したものだなんていう奴には、ウソもいいかげんにしやがれ、とドヤしつけてやりたい。
ところで、カトリック教会は宣教の方便として聖書にもろくな記述がない「聖母マリア」なる1種の女神を発明した。けだし母親への慕情はsomething internationalだからだ。で、この女神を崇敬するためにささげるものとして、ユリの花が選ばれた。汚らわしい、淫乱な多神教の女神を賛えるバラなど、もってのほかだというわけである。しかし、rosemaryというコトバの誕生後、その語源とは関係なくrose + mary、すなわち聖母マリアとバラが結びつけられて考えられるようになり、バラがこの一神教では本来、存在してはならぬ「女神」の像や絵画などに添えられるようになった。これも一種の「ルネサンス」だろう。このことはハーブとしてそのローズマリー、アロマテラピー用精油としてのローズマリー油とは、直接結びつくものではないが、ちょっと私がつれづれなるままに連想した一席である。
付記2
シェークスピアの四大悲劇の1つ『ハムレット』で、忘れがたいセリフの一つに,復仇のために狂人を装ったハムレットにじゃけんに扱われ、なかば気がふれた哀れなオフィーリアのこういうことばがある。
“There’s rosemary, that’s for rememberance.”
(ローズマリーをどうぞ、忘れないで、というしるしよ)
中近世のヨーロッパのハーバリズム(植物療法)でも、これの香り、あるいは香りのもとのローズマリーが、記憶を留める効果があるとされていたようである。また疫病の蔓延防止(これは理解できる)、不老、魂の不滅化(これはあまりアテにはならない)の目的でローズマリーが使用された。
ローズマリーの花言葉は「変わらない愛と記憶」、「貞節・誠実」などである。どれもアテにならぬものばかりです。
付記3
なんでもそうだが、CO2抽出法にもポジティブな面とネガティブな面とがある。たとえばラベンダー油に含まれるリナリルアセテート、ジャーマンカモミール油に含有されるカマズレンはいずれも水蒸気蒸留中に一定の圧力と熱とのもとで、化学的に自然に生成する成分なので、CO2抽出法でとったこれらのアブソリュートには、リナリルアセテートもカマズレンも入っていない。だから、それらの成分のもたらす諸効果も全く期待できない。
しかし、ローズマリーのエッセンスは、CO2抽出法でとった場合、成分が変化しないので、なまのハーブそのままの成分が保持され、香りもローズマリー精油より格段によい。一度嗅ぐと、あっと驚くことうけあいである。ぜひ専門家にこの「効果」を臨床的に研究してほしいと願うこと切なり、だ。
ただし、原料植物が有機栽培・無農薬品でなければダメだが。
2015年3月5日木曜日
ローズウッド(ボア・ド・ローズ)|精油類を買うときには注意して!(41)
ローズウッド(ボア・ド・ローズ)油
学名 Aniba rosaeodora var.amazonica Ducke.
Aniba parviflora Mez.
Ocotea caudate Mez.
南米の熱帯地方ガイアナ、ブラジル、ペルーなどに生育するクスノキ科の常緑高木、樹高30~40mになる。このローズウッドは南米ガイアナ、アマゾン川流域の低地の熱帯雨林にとくに広く分布する。
この木材には、リナロールが多量に含まれ、バラを思わせるその香りからrosewoodの名がつけられた。
香料業界ではこの木はもっぱらそのフランス語のbois de rose(ボア・ド・ローズ)の名で呼ばれ、かなり以前からこの材から採れる精油が香水などの原料に使用されてきた。
アロマテラピーにこの精油が用いられるようになったのは、比較的近年になってからである。
精油の抽出
ローズウッドの原木をチップ状にしたり、オガクズのように細かく砕いたりして、それを水蒸気蒸留して精油を得る。
主要成分(%で示す)
偽和の問題
ローズウッドは、現在、ワシントン条約で商取引が禁じられている絶滅危惧種の植物の一つなので、まともなルートでは本物のローズウッド油はまず入手できない。そこで、合成リナロール、合成リナリルアセテートそのほかの成分で偽造した「ローズウッド油」が横行することになる。
ローズウッドは生長するのに時間がかかるので、その木を切り倒したら、かならずローズウッドの苗木を1本植えることがブラジルで義務づけられたりしたが、これで自然破壊を食い止めることは無理である。そこで、ローズウッドの葉を採取して、その木材に代用しようという提案も行われた。
しかし、葉と材とでは含有成分が異なるので、これも却下された。そこで成分がかなり似ている芳樟(Cinnamomum camphora)の精油がローズウッド油に代えて利用されることが、近年とみに多くなっている(本ブログの「芳樟油(30)」を参照されたい)。以下参照
http://rintarotakayama.blogspot.jp/2014/09/blog-post_30.html
ローズウッド油は、それに代わるもっと安い精油は複数あるので、それらの活用をおすすめしたい。
毒性の問題
・LD50値
>5g/kg(経口)ラットにおいて
>5g/kg(経皮)ウサギにおいて
・刺激性・感作性
ローズウッド油をヒトの皮膚で、12%濃度で適用したが、いずれも認められなかった。
・光毒性
これまでに報告された例はない。
作用
・薬理学的作用
モルモットの回腸で(in vitroで)、鎮痙作用がみられた。
・抗菌作用
細菌の種類にもよるが、総じてきわめて強力である。
・抗真菌作用
試験に供した真菌の種類によって、強弱さまざまな力を示すので、一概にはいえない(弱ないし中程度というところだろう)。
・その他の作用
ローズウッド油には、抗酸化作用は、まず期待することはできない。この精油は、ヒトの皮膚にも粘膜にもきわめて穏和である。
付記
Aniba属には、40種以上ある。Aniba terminalisからもA. rosaeodoraと似た精油がとれる。また、A. canelillaの樹皮にはシナモンと同様の芳香があって、ペルーではこれを茶として利用しているそうである。こんど、折があったら日本緑茶センター株式会社の北島社長にこれについてご教授を仰ごうと思っている。
学名 Aniba rosaeodora var.amazonica Ducke.
Aniba parviflora Mez.
Ocotea caudate Mez.
南米の熱帯地方ガイアナ、ブラジル、ペルーなどに生育するクスノキ科の常緑高木、樹高30~40mになる。このローズウッドは南米ガイアナ、アマゾン川流域の低地の熱帯雨林にとくに広く分布する。
この木材には、リナロールが多量に含まれ、バラを思わせるその香りからrosewoodの名がつけられた。
香料業界ではこの木はもっぱらそのフランス語のbois de rose(ボア・ド・ローズ)の名で呼ばれ、かなり以前からこの材から採れる精油が香水などの原料に使用されてきた。
アロマテラピーにこの精油が用いられるようになったのは、比較的近年になってからである。
精油の抽出
ローズウッドの原木をチップ状にしたり、オガクズのように細かく砕いたりして、それを水蒸気蒸留して精油を得る。
主要成分(%で示す)
リナロール | 85.3-94 |
1,8‐シネオール | 0-1.6 |
リモネン | 0.6 |
シス‐リナロールオキシド | 0-1.5 |
トランス‐リナロールオキシド | 0-1.3 |
テルピネン‐4‐オール | 0.4 |
α‐テルピネオール | 3.5 |
偽和の問題
ローズウッドは、現在、ワシントン条約で商取引が禁じられている絶滅危惧種の植物の一つなので、まともなルートでは本物のローズウッド油はまず入手できない。そこで、合成リナロール、合成リナリルアセテートそのほかの成分で偽造した「ローズウッド油」が横行することになる。
ローズウッドは生長するのに時間がかかるので、その木を切り倒したら、かならずローズウッドの苗木を1本植えることがブラジルで義務づけられたりしたが、これで自然破壊を食い止めることは無理である。そこで、ローズウッドの葉を採取して、その木材に代用しようという提案も行われた。
しかし、葉と材とでは含有成分が異なるので、これも却下された。そこで成分がかなり似ている芳樟(Cinnamomum camphora)の精油がローズウッド油に代えて利用されることが、近年とみに多くなっている(本ブログの「芳樟油(30)」を参照されたい)。以下参照
http://rintarotakayama.blogspot.jp/2014/09/blog-post_30.html
ローズウッド油は、それに代わるもっと安い精油は複数あるので、それらの活用をおすすめしたい。
毒性の問題
・LD50値
>5g/kg(経口)ラットにおいて
>5g/kg(経皮)ウサギにおいて
・刺激性・感作性
ローズウッド油をヒトの皮膚で、12%濃度で適用したが、いずれも認められなかった。
・光毒性
これまでに報告された例はない。
作用
・薬理学的作用
モルモットの回腸で(in vitroで)、鎮痙作用がみられた。
・抗菌作用
細菌の種類にもよるが、総じてきわめて強力である。
・抗真菌作用
試験に供した真菌の種類によって、強弱さまざまな力を示すので、一概にはいえない(弱ないし中程度というところだろう)。
・その他の作用
ローズウッド油には、抗酸化作用は、まず期待することはできない。この精油は、ヒトの皮膚にも粘膜にもきわめて穏和である。
付記
Aniba属には、40種以上ある。Aniba terminalisからもA. rosaeodoraと似た精油がとれる。また、A. canelillaの樹皮にはシナモンと同様の芳香があって、ペルーではこれを茶として利用しているそうである。こんど、折があったら日本緑茶センター株式会社の北島社長にこれについてご教授を仰ごうと思っている。
2015年2月25日水曜日
レモングラス|精油を買うときには注意して!(40)
レモングラス油
学名 Cymbopogon citratus Stapf.
主産地 インドネシア、ベトナム、西インド諸島、ブラジル、グアテマラ、米国など
レモングラスは、イネ科オガルカヤ属の単子葉の多年草。英語でWest Indian lemongrass、中国語で檸檬香茅(ニンモンシャンマオ)と呼ぶ。フランス語では、Citronnelle(シトロネル)あるいはVerveine des Indes(ヴェルヴェーヌ・デ・ザンド)と称する。
インド原産。草丈は高く、1mから1.5mにもなり、茎は太く、葉は長さ50cm(幅は1.5㎝)ぐらいにまで生長する。葉の色は淡い緑色。多数の花序をもつ。
草全体にレモンを思わせる芳香を放つエッセンスが含まれる。レモングラスは熱帯、亜熱帯で香料用に栽培されている。葉を細かくきざんでスープやカレーなどの香りづけに使うほか、中国では草全体を薬用にし、風邪に伴う頭痛、関節痛の緩和などに利用してきた。
上述の植物「ウェストインディアンレモングラス」とは近縁ながら別種のものがあり、これも「レモングラス」、あるいは「イーストインディアンレモングラス」と呼ばれる。主産地は東南アジアである。その学名を下に示す。
学名 Cymbopogon flexuosus(Steud.)Wats
これも前記のレモングラスと同様に、香料植物としてその精油がひろく使われる。
精油の抽出
ウェスト、イーストの各レモングラスとも、生長した茎・葉を刈りとって細切し、水蒸気蒸留して精油を得る。
精油の成分(%で示す)
(ウェストインディアンレモングラスの場合)
(イーストインディアンレモングラスの場合)
学名 Cymbopogon citratus Stapf.
主産地 インドネシア、ベトナム、西インド諸島、ブラジル、グアテマラ、米国など
レモングラスは、イネ科オガルカヤ属の単子葉の多年草。英語でWest Indian lemongrass、中国語で檸檬香茅(ニンモンシャンマオ)と呼ぶ。フランス語では、Citronnelle(シトロネル)あるいはVerveine des Indes(ヴェルヴェーヌ・デ・ザンド)と称する。
インド原産。草丈は高く、1mから1.5mにもなり、茎は太く、葉は長さ50cm(幅は1.5㎝)ぐらいにまで生長する。葉の色は淡い緑色。多数の花序をもつ。
草全体にレモンを思わせる芳香を放つエッセンスが含まれる。レモングラスは熱帯、亜熱帯で香料用に栽培されている。葉を細かくきざんでスープやカレーなどの香りづけに使うほか、中国では草全体を薬用にし、風邪に伴う頭痛、関節痛の緩和などに利用してきた。
上述の植物「ウェストインディアンレモングラス」とは近縁ながら別種のものがあり、これも「レモングラス」、あるいは「イーストインディアンレモングラス」と呼ばれる。主産地は東南アジアである。その学名を下に示す。
学名 Cymbopogon flexuosus(Steud.)Wats
これも前記のレモングラスと同様に、香料植物としてその精油がひろく使われる。
精油の抽出
ウェスト、イーストの各レモングラスとも、生長した茎・葉を刈りとって細切し、水蒸気蒸留して精油を得る。
精油の成分(%で示す)
(ウェストインディアンレモングラスの場合)
リモネン | 1-11 |
シトラール | ネラール(22-33)、ゲラニアール(37-45.5) |
シトロネラール | 1-13.5 |
(イーストインディアンレモングラスの場合)
α‐テルピネオール | 2.25 |
ボルネオール | 1.9 |
ゲラニオールおよびネロール | 1.5 |
ファルネソール | 12.8 |
シトラール類 | ネラール(2.8-33)、ゲラニアール(47) |
ファルネサール | 3 |
偽和の問題
レモングラス油は、数ある精油のなかでも、もっとも安価なものの一つなので、これにわざわざ合成化学成分などを加えたりすることは、まずないといってよい。中国では、レモングラス油に代えてリツェアクベバ油を利用するケースもあるが、これはもとより「偽和」ではない。このリツェアクベバ油も、シトラール含量が多い。レモングラスは、ビタミンA剤ならびに香料のイヨノン類の生産原料としても利用されている。
毒性の問題
・LD50値
(ウェストインディアンレモングラスの場合)
>5g/kg(経口) ラットにおいて
>5g/kg(経皮) ウサギにおいて
(イーストインディアンレモングラスの場合)
>5g/kg(経口) ラットにおいて
>2g/kg(経皮) ウサギにおいて
・刺激性・感作性(ウェスト・イースト両種)
ヒトにおいて、4%濃度で皮膚に適用しても、問題はみられなかった。
・光毒性(ウェスト・イースト両種)
これまでに報告されたケースはない。
作用(ウェスト・イースト両種)
・薬理的作用
モルモットの回腸において(in vitroで)、強い痙攣惹起作用を示した(この点で、P.フランコム氏の見解には疑義がある)。
・抗菌作用
かなり強力である。空気中の雑菌にたいして、殺菌ないし静菌効果が期待できる。
・抗真菌作用
これもかなり強力。皮膚糸状菌(ひろい意味での白癬菌)を起因とする各種の疾患の治療に利用できそうである。
・その他の作用
レモングラス油をヒトが嗅いだ場合、そのCNVの波形を見ると、若干ではあるものの、この精油に刺激興奮作用があることがわかる。また、この精油にはある程度、抗酸化作用が認められる。
付記①
フランスではレモン様の香りをもつハーブ類、あるいはそれらから採れる精油類を、あまり区別しないで、ひとまとめにCitronnelle(シトロネル)と俗称している(もちろん学者は、そんなことはしないが)。
例えば、
Cymbopogon citratus → Citronnelle
C.nardus → Citronnelle
さらに、Melissa officinalis → Citronnelle
といったぐあいである。まあ、M.officinalisは「メリス」とちゃんと区別して呼ぶ人もいるが、やっぱり少数派である。
付記②
レモングラス油は、昆虫忌避剤としては、あまり有効でない。蚊やり目的だったら、従来の蚊とり線香のほうがずっとよい。
2015年2月18日水曜日
レモン | エッセンス類を買うときには注意して!(39)
レモン エッセンス
学名 Citrus limon (L.) Burm.f.
C. limon Risso
主産地 イタリア、スペイン、米国、アルゼンチンなど
レモンは、ヒマラヤ、インド北東部が原産地のミカン科の常緑のカンキツ類果樹。フランス語ではシトロン(Citron)と称する。しかし、学問的にはこれは誤りで、本物のシトロンはCitrus medicaである。
しかし、C. limonとC. medicaとが近縁であることは確かであり、C. medicaからC. limonが派生したようだ(Citrus limonという学名は、以前はC. limonumと表記した)。
ヨーロッパにはアラブ人によって北アフリカに伝えられ、12世紀にはスペインやカナリア諸島などに伝播(でんぱ)し、13世紀にはイタリア半島にもちこまれ、シチリア島を中心にレモン栽培が産業化された。
中国には宋の時代(960~1279)に伝わった。米大陸にはコロンブスの新大陸到達の1492年の翌年に早くももちこまれ、以降カリフォルニア、アリゾナで広範に栽培された。
日本には1873年に伝来し、太平洋戦争前には気候が地中海に似た瀬戸内海の島々で、レモンの果実が年間3000トンほど収穫されていたが、敗戦後は米国からの輸入レモンに圧倒され、わが国のレモン栽培は衰えてしまった。
現在では米国から年間10万~1 3万トンもの果実を輸入しているが、米国の業者は日本向けに輸出するレモンには発ガン性のある防カビ剤をたっぷりかけ、そうしたポストハーベスト剤にやかましい欧州への輸出レモンには、こうしたことをしないようにしている(だから、紅茶にはミルクを入れて飲むことを、ぜひともお勧めする。「レモンティー」はおやめなさい。紅茶にレモン片などを入れて飲むのは、そもそも邪道です、と警視庁特命係の杉下右京が言っていた)。
エッセンスの抽出
レモンの果皮を集めて、これを冷搾してエッセンスを得る。レモンエッセンス1kgを採るのに、3000個分の果皮が必要。この果皮を水蒸気蒸留して抽出したものはレモンエッスンスではなく、レモン油である。ここをまちがえないでいただきたい。このエッセンスは、爽やかな香りを放ち、無色、淡黄色ないし緑がかった色を呈する。
レモンエッセンスの主要成分(%で示す)
微少成分
フロクマリン類
偽和の問題
レモンエッセンスを含むいろいろなカンキツ類のエッセンスは、folding(フォールディング)とwashing(ウォッシング)という方法で処理することが多い。これらの処置を施すと、原料が希薄な空気中で加熱されてテルペン類の一部が蒸散し、またアルコールを溶かした水に原料を入れて洗い24時間も撹拌すると、さらに脱テルペンがどんどん進行する。これでは、天然自然のエッセンスからほど遠いものになってしまう(ルネ=モーリス・ガットフォセが、これをよしとしていたことを忘れてはならない)。
レモンエッセンスは、果皮を蒸留してとったレモン精油で偽和されることも多い。脱テルペン精油、脱セスキテルペン精油、合成リモネン、合成シトラール、合成ジペンテンを加えて増量することも多々ある。
この手の偽和は、ガスクロマトグラフィーによる分析でも看破することはむずかしい。安く手に入るレモングラス油からとったシトラールを添加する業者も少なくない。オレンジ油をレモンエッセンスに加えて増量する輩もザラである(真正のレモンエッセンスは、オレンジ油の10倍もすることを念願におかれたい)。
また、カンキツ類のエッセンスはいずれも酸化して劣化しやすいために、各種の抗酸化剤をこっそりこれらに加えて棚おき寿命を伸ばそうとする悪党どももアトを絶たない。
毒性の問題
・LD50値
>5g/kg (経口) ラットにおいて
>5g/kg (経皮) ウサギにおいて
・刺激性・感作性
10%から100%まで濃度を変えてテストしたが、いずれも認められなかった。
・光毒性
試験に供したレモンエッセンスの化学的な組成、ならびに被験者の感受性に依存して結果が変動するので、一概にはいえない。
作用
・薬理学的作用 モルモットの回腸において(in vitroで)、強烈な痙攣惹起作用を示した。
・抗菌作用
最近の研究によれば、一般に弱いことがわかった。ジャン・バルネ博士が強力な殺菌力があるといっているのは、あくまでもレモンの果汁のことである。
・抗真菌作用
テストした真菌の種類によって、各種各様の結果がみられた。一概にはいえない。
・その他の作用
レモンエッセンスはCNVの波形を見ると鎮静効果があることがわかる。しかしまた、病院にいる患者の近くでこれをスプレーすると、その「うつ状態」が改善をみたとの報告もある。さらに、d‐リモネンを配合した薬剤が胆石を溶解するために利用されてきたことも付言しておきたい。
学名 Citrus limon (L.) Burm.f.
C. limon Risso
主産地 イタリア、スペイン、米国、アルゼンチンなど
レモンは、ヒマラヤ、インド北東部が原産地のミカン科の常緑のカンキツ類果樹。フランス語ではシトロン(Citron)と称する。しかし、学問的にはこれは誤りで、本物のシトロンはCitrus medicaである。
しかし、C. limonとC. medicaとが近縁であることは確かであり、C. medicaからC. limonが派生したようだ(Citrus limonという学名は、以前はC. limonumと表記した)。
ヨーロッパにはアラブ人によって北アフリカに伝えられ、12世紀にはスペインやカナリア諸島などに伝播(でんぱ)し、13世紀にはイタリア半島にもちこまれ、シチリア島を中心にレモン栽培が産業化された。
中国には宋の時代(960~1279)に伝わった。米大陸にはコロンブスの新大陸到達の1492年の翌年に早くももちこまれ、以降カリフォルニア、アリゾナで広範に栽培された。
日本には1873年に伝来し、太平洋戦争前には気候が地中海に似た瀬戸内海の島々で、レモンの果実が年間3000トンほど収穫されていたが、敗戦後は米国からの輸入レモンに圧倒され、わが国のレモン栽培は衰えてしまった。
現在では米国から年間10万~1 3万トンもの果実を輸入しているが、米国の業者は日本向けに輸出するレモンには発ガン性のある防カビ剤をたっぷりかけ、そうしたポストハーベスト剤にやかましい欧州への輸出レモンには、こうしたことをしないようにしている(だから、紅茶にはミルクを入れて飲むことを、ぜひともお勧めする。「レモンティー」はおやめなさい。紅茶にレモン片などを入れて飲むのは、そもそも邪道です、と警視庁特命係の杉下右京が言っていた)。
エッセンスの抽出
レモンの果皮を集めて、これを冷搾してエッセンスを得る。レモンエッセンス1kgを採るのに、3000個分の果皮が必要。この果皮を水蒸気蒸留して抽出したものはレモンエッスンスではなく、レモン油である。ここをまちがえないでいただきたい。このエッセンスは、爽やかな香りを放ち、無色、淡黄色ないし緑がかった色を呈する。
レモンエッセンスの主要成分(%で示す)
d‐リモネン | 60-80 |
α‐ピネン | 1-4 |
β‐ピネン | 0.4-15 |
γ‐テルピネン | 6-14 |
ゲラ二アール | 1-3 |
ネラール | 0.2-1.3 |
ミルセン | 0-13 |
p‐シメン | 0-2 |
α‐ベルガモテン | 0-2.5 |
微少成分
フロクマリン類
偽和の問題
レモンエッセンスを含むいろいろなカンキツ類のエッセンスは、folding(フォールディング)とwashing(ウォッシング)という方法で処理することが多い。これらの処置を施すと、原料が希薄な空気中で加熱されてテルペン類の一部が蒸散し、またアルコールを溶かした水に原料を入れて洗い24時間も撹拌すると、さらに脱テルペンがどんどん進行する。これでは、天然自然のエッセンスからほど遠いものになってしまう(ルネ=モーリス・ガットフォセが、これをよしとしていたことを忘れてはならない)。
レモンエッセンスは、果皮を蒸留してとったレモン精油で偽和されることも多い。脱テルペン精油、脱セスキテルペン精油、合成リモネン、合成シトラール、合成ジペンテンを加えて増量することも多々ある。
この手の偽和は、ガスクロマトグラフィーによる分析でも看破することはむずかしい。安く手に入るレモングラス油からとったシトラールを添加する業者も少なくない。オレンジ油をレモンエッセンスに加えて増量する輩もザラである(真正のレモンエッセンスは、オレンジ油の10倍もすることを念願におかれたい)。
また、カンキツ類のエッセンスはいずれも酸化して劣化しやすいために、各種の抗酸化剤をこっそりこれらに加えて棚おき寿命を伸ばそうとする悪党どももアトを絶たない。
毒性の問題
・LD50値
>5g/kg (経口) ラットにおいて
>5g/kg (経皮) ウサギにおいて
・刺激性・感作性
10%から100%まで濃度を変えてテストしたが、いずれも認められなかった。
・光毒性
試験に供したレモンエッセンスの化学的な組成、ならびに被験者の感受性に依存して結果が変動するので、一概にはいえない。
作用
・薬理学的作用 モルモットの回腸において(in vitroで)、強烈な痙攣惹起作用を示した。
・抗菌作用
最近の研究によれば、一般に弱いことがわかった。ジャン・バルネ博士が強力な殺菌力があるといっているのは、あくまでもレモンの果汁のことである。
・抗真菌作用
テストした真菌の種類によって、各種各様の結果がみられた。一概にはいえない。
・その他の作用
レモンエッセンスはCNVの波形を見ると鎮静効果があることがわかる。しかしまた、病院にいる患者の近くでこれをスプレーすると、その「うつ状態」が改善をみたとの報告もある。さらに、d‐リモネンを配合した薬剤が胆石を溶解するために利用されてきたことも付言しておきたい。
2015年2月2日月曜日
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