学名 Cymbopogon citratus Stapf.
主産地 インドネシア、ベトナム、西インド諸島、ブラジル、グアテマラ、米国など
レモングラスは、イネ科オガルカヤ属の単子葉の多年草。英語でWest Indian lemongrass、中国語で檸檬香茅(ニンモンシャンマオ)と呼ぶ。フランス語では、Citronnelle(シトロネル)あるいはVerveine des Indes(ヴェルヴェーヌ・デ・ザンド)と称する。
インド原産。草丈は高く、1mから1.5mにもなり、茎は太く、葉は長さ50cm(幅は1.5㎝)ぐらいにまで生長する。葉の色は淡い緑色。多数の花序をもつ。
草全体にレモンを思わせる芳香を放つエッセンスが含まれる。レモングラスは熱帯、亜熱帯で香料用に栽培されている。葉を細かくきざんでスープやカレーなどの香りづけに使うほか、中国では草全体を薬用にし、風邪に伴う頭痛、関節痛の緩和などに利用してきた。
上述の植物「ウェストインディアンレモングラス」とは近縁ながら別種のものがあり、これも「レモングラス」、あるいは「イーストインディアンレモングラス」と呼ばれる。主産地は東南アジアである。その学名を下に示す。
学名 Cymbopogon flexuosus(Steud.)Wats
これも前記のレモングラスと同様に、香料植物としてその精油がひろく使われる。
精油の抽出
ウェスト、イーストの各レモングラスとも、生長した茎・葉を刈りとって細切し、水蒸気蒸留して精油を得る。
精油の成分(%で示す)
(ウェストインディアンレモングラスの場合)
リモネン | 1-11 |
シトラール | ネラール(22-33)、ゲラニアール(37-45.5) |
シトロネラール | 1-13.5 |
(イーストインディアンレモングラスの場合)
α‐テルピネオール | 2.25 |
ボルネオール | 1.9 |
ゲラニオールおよびネロール | 1.5 |
ファルネソール | 12.8 |
シトラール類 | ネラール(2.8-33)、ゲラニアール(47) |
ファルネサール | 3 |
偽和の問題
レモングラス油は、数ある精油のなかでも、もっとも安価なものの一つなので、これにわざわざ合成化学成分などを加えたりすることは、まずないといってよい。中国では、レモングラス油に代えてリツェアクベバ油を利用するケースもあるが、これはもとより「偽和」ではない。このリツェアクベバ油も、シトラール含量が多い。レモングラスは、ビタミンA剤ならびに香料のイヨノン類の生産原料としても利用されている。
毒性の問題
・LD50値
(ウェストインディアンレモングラスの場合)
>5g/kg(経口) ラットにおいて
>5g/kg(経皮) ウサギにおいて
(イーストインディアンレモングラスの場合)
>5g/kg(経口) ラットにおいて
>2g/kg(経皮) ウサギにおいて
・刺激性・感作性(ウェスト・イースト両種)
ヒトにおいて、4%濃度で皮膚に適用しても、問題はみられなかった。
・光毒性(ウェスト・イースト両種)
これまでに報告されたケースはない。
作用(ウェスト・イースト両種)
・薬理的作用
モルモットの回腸において(in vitroで)、強い痙攣惹起作用を示した(この点で、P.フランコム氏の見解には疑義がある)。
・抗菌作用
かなり強力である。空気中の雑菌にたいして、殺菌ないし静菌効果が期待できる。
・抗真菌作用
これもかなり強力。皮膚糸状菌(ひろい意味での白癬菌)を起因とする各種の疾患の治療に利用できそうである。
・その他の作用
レモングラス油をヒトが嗅いだ場合、そのCNVの波形を見ると、若干ではあるものの、この精油に刺激興奮作用があることがわかる。また、この精油にはある程度、抗酸化作用が認められる。
付記①
フランスではレモン様の香りをもつハーブ類、あるいはそれらから採れる精油類を、あまり区別しないで、ひとまとめにCitronnelle(シトロネル)と俗称している(もちろん学者は、そんなことはしないが)。
例えば、
Cymbopogon citratus → Citronnelle
C.nardus → Citronnelle
さらに、Melissa officinalis → Citronnelle
といったぐあいである。まあ、M.officinalisは「メリス」とちゃんと区別して呼ぶ人もいるが、やっぱり少数派である。
付記②
レモングラス油は、昆虫忌避剤としては、あまり有効でない。蚊やり目的だったら、従来の蚊とり線香のほうがずっとよい。
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