ディル(Anethum graveolens L.)油
ユーロピアン・ディル・ハーブ油(全草油)
ユーロピアン・ディル・シード油(種子油)
インド・ディル(Anethum sowa Roxb.)油
シード油(種子油)
いずれもセリ科の1〜2年草。和名はイノンド。この全草、または種子だけを水蒸気蒸留して精油を抽出する。
原産地:ハンガリー、フィンランド、その他のヨーロッパ諸国、ならびにインドなど。
古くから香味料として用いられてきた植物で、春にタネをまき、7月ごろ未熟なときに収穫して、干して追熟させて、果実をとる。この果実の種子はソースやカレーなどにまぜて、パン・ケーキ等の香り付けに利用する。
中国伝統医学では、この種子を「蒔蘿子(じらし)」と呼び、駆風剤・興奮剤などに使う。
また、ヨーロッパではディルの若葉を摘んで、スープ、ソース、ピクルスの香り付けに用いる。
日本には江戸時代にヨーロッパから入ってきた。このスペイン語eneldoから、日本語としては奇妙な響きをもつ「イノンド」ということばができた。
・主要成分(%で示す)
全草 種子 インド・ディル種子
リモネン 20〜65 40〜68 11〜34
α-フェランドレン 3〜58 0.4〜30 4〜11
カルボン 0.2〜2 54 30〜49
ジヒドロカルボン 1〜5 0.5〜5 0.1〜11
ディルアピオール 0〜55 20 3〜67
(正確には、3,9-オキシ-p-メント-1-エン)
ミリスチシン 0〜7 0〜7 痕跡量
・偽和の問題
合成したリモネンで稀釈したり、合成カルボンやキャラウェイ(ヒメウイキョウ)油を添加したりして増量するケースがひんぱんにある。
・毒性
LD50値 標記の2種とも同じと考えてよい。
ラットで4g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
刺激性・感作性
ヒトにおいて4%濃度で、これらはいずれも認められなかった。
光毒性
なし。
・作用
ユーロピアンディル油は、体外に取り出したモルモットの回腸で(すなわちin vitroで)、まず強い痙攣惹起作用を発揮し、ついで鎮痙作用を示した。
ディルアピオールはネコの子宮にたいして鎮痙作用をあらわした。これを多量に投与したところ、子宮が麻痺した。
抗菌効果 いろいろな研究によって、ディル油(全草油・シード油とも)は広いスペクトラムにわたってかなり強力な抗菌力を示すことが判明している。
抗真菌効果 全草油もシード油も、強力な抗真菌効果がある。
ユーロピアン・ディル油(全草油・シード油とも)は抗酸化作用は認められない。
CNVの波形では、ディル油はみな鎮静作用があることがわかっている。
Anethum graveolensのシード油ならびにA. sowa油は、いずれも乳児・小児・妊婦には禁忌(神経毒性があり、また流産をひきおこしかねない恐れがあるとされる)。
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