そこで、このティートリー油について、いくつか思いつくままに、それの特色、注目すべき点、身近な利用法などについて、2回にわたって載せてみようと考えている。
フトモモ科(Myrtaceae)には、何千もの種・亜種が含まれる。この科の植物のほとんどが、エッセンスを収めたエッセンス嚢を有する芳香を放つ葉をもつ。
マートル(ギンバイカ)、ニアウリ、ベイラム(ピメンタ)、カユプテ、クローブ、そしてユーカリ、ティートリーなどがこの科に属する。
ティートリーは、フトモモ科に属するMelaleuca属(コバノブラッシノキ属)の樹木の一種で、コバノブラッシノキ属には、150種にもなるティートリーの各種がある。
この中でもっもと有名なのがMelaleuca cajuputi(カユプテ)とMelaleuca quinquenervia(ニアウリ)であり、いずれも殺菌作用で名高い。しかし、それに次いで有名なMelaleuca alternifolia(ティートリーのスタンダードになる種)の精油には、広いスペクトラムのひときわパワフルな殺菌力がある。
ティートリーは、オーストラリアのニューサウスウェールズの比較的狭小な地域に生育する。
このほかの地区でも、この植物は育たないわけではないが、それから抽出した精油が殺菌力においてはるかに弱いのは、なぜだろうか。
学名のMelaleuca alternifoliaについて考えてみよう。Melaは「黒い」、「ダーク」なという意味、leuca(文法上leuconが原形)は「白い」を意味する。この樹木の外観からきた名である。黒を思わせる濃緑の葉と白い幹との色の対比を思いうかべてほしい。種小名のalternifoliaは「葉が交互についている」ということである。
ティートリー油の成分は、1968年に12種が、1978年に48種がつきとめられた。現在はさらに多くの成分の存在が判明しつつある(100種をはるかに超している)。これらの成分はいずれも協働的・相乗的に作用して、ティートリー油の有効性を担保している。その有効性には、他の精油類にはみられぬユニークなものがある。
ティートリー油には、テルペン類、ピネン類、シメン類、テルペン系シネオール類、セスキテルペン類、セスキテルペンアルコール類が含まれ、さらに植物には通常含まれない少なくとも4種の特殊な組成成分が見出されている。それはビリジフロレン(0.95%)、β-テルピネオール(0.25%)、L-テルピネオール(痕跡量)、アリヘキサノエート(痕跡量)である。
原木をランダムに選んで、葉を採取して蒸留してみても、たとえばシネオール含量には2%から60%ないしそれ以上のひらきがある(植物学的にはすべて同一の原木なのにである)。
このティートリー油の主要成分の一つ、1.8-シネオールは、ご存じのとおりユーカリ油に多量に含まれている成分である。これがユーカリ油のカンファーに似た、いかにもユーカリらしい香りに貢献している。ティートリー油のシネオール分が異常に多いときには、そのティートリー油はユーカリ油で偽和されている可能性がある。シネオールは皮膚に浸透しやすい特性がある。これが腫れものなどに有効なのだが、15%を超す含有量だと、皮膚刺激作用を示し、アレルゲンとなる。
この成分に関することは、あとで改めて述べることとして、いまわかっているティートリー油の主要な成分をまずあげておきたい。もちろんこれは一つの目安である。
成分(%で示す)
α-ピネン | 2.5 | γ-ムウロレン | 痕跡量 | |
α-p-ジメチスチレン | 痕跡量 | グロブロール | 0.2 | |
レドール | 痕跡量 | ビリジフロール | 0.1 | |
ロシフォリオール | 痕跡量 | スパツレノール | 痕跡量 | |
cis-p-メント-2-エン-1-オール | 0.1 | テルピネン-4-オール | 40 | |
α-ブルネセン | 痕跡量 | カンフェン | 痕跡量 | |
α-ツエン | 0.9 | β-ピネン | 0.3 | |
α-アモルフェン | 痕跡量 | p-シメン-8-オール | 痕跡量 | |
リナロール | 痕跡量 | サビネン | 0.2 | |
α-クベベン | 痕跡量 | α-フェランドレン | 0.3 | |
α-イランゲン | 痕跡量 | 1.9-シネオール | 痕跡量 | |
cis-サビネンハイドレート | 痕跡量 | リモネン | 1.0 | |
β-フェランドレン | 0.9 | 1.8シネオール | 0.1 | |
α-グルユネン | 0.2 | トランス-ピペリトール | 痕跡量 | |
テルピノレン | 3.2 | クベノール | 0.1 | |
メンチュオイゲノール | 痕跡量 | β-カリオフィレン | 0.1 | |
アロマデンドレン | 1.4 | β-グルユネン | 0.1 | |
β-エレメン | 0.1 | δ-カジネン | 1.2 | |
アロ-アロマデンドレン | 0.3 | α-フムレン | 痕跡量 | |
ビリジフロレン | 1.0 | α-テルピネオール | 2.3 | |
α-ムウロレン | 0.1 | トランス-p-メント-2-エン-1-オール | 0.2 | |
パルストロール | 痕跡量 | ビシクロドルマクレン | 0.1 | |
γ-シメン | 2.8 | ミルセン | 0.5 | |
トランス-サビネンハイドレート | 痕跡量 | cis-ピペリトール | 痕跡量 | |
カジナ-1.4-ジエン | 0.1 | α-テルピネン | 10.4 | |
カラメネン | 0.1 | ネロール | 痕跡量 | |
α-コパエン | 痕跡量 | トランス-6-オシメン | 痕跡量 | |
1.2.4-トリヒドロオキシ-p-メンタン | 痕跡量 |