2014年11月13日木曜日

〔コラム〕ペットへのアロマテラピーについて一言

 近ごろでは、少子化と裏腹にペットを飼う人間が異常というか、異様にふえている。
ペットとして飼養される動物のチャンピオンは、なんといっても、イヌとネコだろう。あとは、小鳥や魚類(古典的な金魚、あるいは熱帯魚、広い池が邸内にあればニシキゴイなんてところか)や、ゲテモノ好きにはヘビ・トカゲ・カメレオン・カメなどの爬虫類などもあげられるだろう。
 
 ここでは、イヌ・ネコに限ってお話ししたい。身近にこれらを飼っている人間がとくに多いからだ。
 では、本題に入る。
 私がアロマテラピーを足かけ30年前に日本に紹介してから、英国・フランス以上に、わが国ではそれこそ猫も杓子(しゃくし)もこの自然療法を、その実体を、その本質をろくに理解しないままもてはやすようになった。
 その結果、インチキな「アロマテラピー」がさまざまな形態で横行することになり、市販の「アロマテラピー用精油」の90パーセント以上が完全な偽物精油という状況が生まれてしまった。これについては、強調しすぎることはあるまい。
 
 日本人は、本当におとなしい。こんな精油で効果(プラシーボ効果以上の効果)が生じたら、キリストの復活以来の奇跡といってよい。高価な精油を購入し、それを自分の体に適用して効果がみられない場合、欧米人だったら精油の販売店に、精油のメーカーないし販売代理店にクレームをつけずにはおくまい。しかし、「お・も・て・な・し」の「美風」をよしとする大半の日本人は、それが中国産・韓国産のものだったら、目を三角にしてイキリ立つかもしれないが、おフランス産とかオーストラリア産とかいったラベルの精油・エッセンスになると、「アタシの体のほうが悪いんだわ」とムリヤリ自分を納得させてしまう。そして、この療法自体にムリがあるのではないかとの疑問を公けにするとか、「アタシの買った精油、本当にピュアなの? その証拠を見せてちょうだい」などと販売店にネジこんだりとかする行為には、まず絶対に走らない。私のようなヘソ曲がりは、千人に一人ぐらいなんだろう。
 
 しかし、その精油を使ったら、体調を崩してしまったと口に出していえる人間はまだよい。近ごろでは、自分の飼っているイヌ・ネコに、強引にアロマテラピーを施す人間がいる。よく考えてほしい。精油はテルペン類・アルデヒド類・テルペノール類・エステル類・ケトン類・酸類・フェノール類・オキシド類、例外的だが硫化物類などからなっている。人間の肉体は、これらを吸収してしかじかの効果を発揮させたのち、これらを代謝・分解し、排せつする働きが備わっている。むろんその精油が本物で、用法・用量が適切だったらの話ですよ。
 しかし、イヌ・ネコのような本来、肉食系の動物には、これらの成分のうち、代謝・分解できないものがあるのだ(代謝するための酵素がもともとつくれない)。それは、イヌ・ネコにとって毒物になってしまい、イヌ・ネコを病気にしたり、その命までも奪ったりしてしまう結果をもたらす。比喩として、穏当を欠くかもしれないが、ネコもヒトも体内で代謝分解できないメチル水銀が原因で、水俣病がおこったことを想起されたい。いま、たくさんのペットが、無知な飼い主の施す「アロマテラピー」の犠牲になって死んでいる。古い昔からの人類の友であるこうした動物たちの日本における実状を知ってほしい。
 
 半可通の、というより何も知らぬ人間の得手勝手なひとりよがりで「アロマテラピー」の犠牲にされるペットたちこそ哀れである。
 獣医師でもアロマテラピーについて、またそれを動物に施す際の的確な技術について十全に通じているものは、稀有といってよい。いままで、従来のさまざまな技術で動物の病気をちゃんと治してきた獣医たちが、何が悲しくて「アロマテラピー」などをいま慌てて採用する必要性が、必然性があるのか。
 
 結論として申しあげる。イヌ・ネコなどのペットを対象としたアロマテラピーは、不必要の一語に尽きる。 

この記事は参考になりましたか?

少しでも参考になればSNSでシェアしてもらうと嬉しいです。
   ↓ ↓ ↓

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿