クラリセージ(Salvia sclarea)油
モロッコ、ロシアなどを原産地とするシソ科のこの小低木の、花の咲いた先端部分と葉との双方を、蒸留して抽出する精油。
セージの類は、ほかにもいろいろあるが(観賞用のサルビア〔ヒゴロモソウなど〕もこの仲間だ)、このクラリセージは含有成分そのほかで、多種のサルビア属植物と、精油成分などに大きな差がある点に注意すること。これに近縁のセージ(Salvia officinalis)油は、よほど扱いに慣れないと危険なので、安全なクラリセージ油を用いる人が多い。
・主要成分(%で示す)
リナリルアセテート 63〜74%
リナロール 8〜28%
カリオフィレン 1〜2%
スクラレオール 0.8〜2%
ゲルマクレンD 0.4〜4%
クラリセージ油には、このほかにも微小成分が、いまわかっているだけでも250種以上含まれている。それらが相乗的に働いて、その特異な薬効を示すとともに、最初はなじめなくても、いちど好きになるとヤミツキになるような独特の香りを形成する。
その微小成分のうち、主要なものとしては、ジヒドロラクトン、各種のエステル、γ-ラクトン、スパツレノール、イソスパツレノールなどがあげられる。
・この精油の偽和の問題
クラリセージ油と称して売られている精油にも、偽和したものが多々ある。合成リナリルアセテートと合成したリナロールを添加したり、ラバンジン油をこっそり加えたり、俗にベルガモットミント(Mentha citrata)といわれるハーブから蒸留抽出した精油をこれでもかといわんばかりに入れた製品がひろく市販されている。こんなものに「薬効」は期待できない。十分に用心し、ダマされないで頂きたい。
・毒性
ラットだとLD50値は5g/kg(経口)、ウサギの場合、>2g/kg(経皮)
刺激性/感作性は、ヒトの皮膚に濃度8%で適用したが、これらはいずれも認められなかった。
光毒性はない。
なお、このクラリセージ油を外用・内用した後はアルコール飲料の摂取は禁物(ひどく悪酔いする)。
・効果
ー 鎮痙作用
ー かなり強力な抗菌作用、相当に強力な殺菌作用があり、そのスペクトラム(つまり有効性を示す範囲)はひろい。
ー 抗真菌作用
その他にも気分を明るく高める働きがあるとされる。マギー・ティスランドはこれに緊張を取り除き、官能性・肉欲性をおもてに出させる力があると言っている(マギーさん、女性として実体験があるのだろう)。
酸化防止作用は認められない。
その他
これには、C20のいわゆるセスキテルペノールのスクラレオールが含まれており、これのエストロゲン(女性ホルモンの1種)様作用がうんぬんされることが多いが、そのことをハッキリ医化学的・薬学的に厳密に立証したデータはない。大げさに騒ぐことはないといっておこう。
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