セージ(Salvia officinalis)油
セージはシソ科の小低木。古代からヨーロッパでその葉は香味料として(ソーセージづくりには不可欠。もっともソーセージのセージは、「塩」を意味するラテン語に由来する)、また薬として使われてきた。ローマ人は、ヘルバ・サクラherba sacra(聖なる草)とも呼んだ。salviaはsalvation(「救い」を意味する英語)と同じ語源から来ている。
英語では、これをダルメシアンセージ、トルーセージ、レッドセージ、イングリッシュセージともいう。
この原産地は英国とされる。グループサウンズのサイモン&ガーファンクルのヒットソング「スカボローフェア」の「パスリ、セージ、ローズマリー、アンド、タイム」というリフレインの歌詞は有名だ。
これと近縁の別種の“セージ”として、スパニッシュセージ(Salvia lavandulaefolia)があり、これもアロマテラピーで使用されることがときどきある。原産地はスペインである。
いずれも生乾き状態の葉を水蒸気蒸留して精油をとる。
・主要成分(%で示す)
ダルメシアン種 スパニッシュ種
1,8-シネオール 8〜24 18〜54
α-ツヨン 15〜48 0
β-ツヨン 2〜25 0
カンファー 2〜27 1〜36
リナロール 0〜32 0〜9
α-ピネン 痕跡量 4〜20
β-ピネン 痕跡量 6〜19
カンフェン 痕跡量 4〜30
p-シメン 痕跡量 1〜5
ごらんのように、これら2種のセージはそれぞれ成分に差があるだけでなく、クラリセージ油ともちがった組成をしている。
・偽和の問題
ダルメシアンセージ油は、これとは別種のグリークセージ(Salvia triloba)の精油で偽和されることがよくある。グリークセージは、1,8-シネオール含量が42〜64%にも達する。また、ヴァージニアン シダーウッド油または前述のグリークセージ油から分離したツヨンを添加することも多い。パルマローザ(Cymbopogon martinii)油を加えることも往々ある。人間の悪知恵にはキリがありません。
・毒性
LD50値
ダルメシアンセージ油 ラットで2.6g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
スパニッシュセージ油 ラットで>5g/kg(経口)、ウサギで>5g/kg(経皮)
グリークセージについてはまだ報告例がない。
刺激性・感作性
ヒトにおいて8%濃度で、これらは認められなかった。
光毒性
スパニッシュセージ油は、光毒性はない。ダルメシアンセージ油については、いまだに試験例がない。
その他
ツヨンは、ふつう有毒とみなされている。しかし、α-ツヨン、β-ツヨンとも、英米では食品用香料として、ごく少量ならば、その使用が許されている。
含有ツヨン分のせいで中毒患者を多くだしたフランスのアブサン酒のほうは、1915年に製造が禁止されている。しかし、そのもとになったヒソップ(Hyssopus officinalis)は、この生育地によってツヨン分をほとんど、あるいはまったく含まないケモタイプがある。フランスの有名なリキュールの「シャルトルーズ」は、そうしたヒソップを使っているので、これまで、何もトラブルをおこした例はない。
セージはツヨンを多く含むので、多量に摂取すると中枢神経系に毒性を示し、麻痺を惹起する。特に女性はツヨンに弱いらしく、セージ油を用いたマッサージをうけたり、沐浴用に多くて10滴湯に落として用いたりしただけで腹痛に襲われたり(子宮の異常収縮に起因するものだ)、ひどい月経過多になったりしたケースが報告されている。多くのセラピストは、このためにこれに代えてクラリセージ油を利用している。ダルメシアンセージ油は幼児に使ってはダメ。癲癇(てんかん)の素質のある人間に使用するのも、妊娠中の女性に用いるのも、いずれも禁忌。
また、食品添加物として許されるのは、体重1kgあたり10mgから35mgの範囲である。添加量を10mg/kg以下にしなければならないのは、アルコール飲料だ。
ダルメシアンセージよりもはるかに安全な、近縁のクラリセージ油を用いてマッサージをうけたあとでも、アルコール飲料を摂取すると、ひどく悪酔いする。クラリセージ油を用いたマッサージを受けた後、車を運転するのもいけないといっている人もいる。
・作用
ダルメシアン・スパニッシュの両セージは、体内からとりだしたモルモットの回腸で痙攣惹起作用を示した。
抗菌作用 細菌の種類にもよるが、総じてあまり強いとはいえない。
抗真菌作用 真菌の種類によって、さまざまである。
駆風作用 両種のセージとも、この働きを示した。
酸化防止作用 ダルメシアンセージに、これが認められる。
痙攣惹起作用 ラットでもヒトでも、多量に使うと痙攣をひきおこす。内用はもとより、外用でもそうである。
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