2013年12月10日火曜日

Ylang ylang / Ilang ilang(イランイラン)|精油を買うときには注意して!① (50音順)

 「精油の化学」は12まで続きますが、ちょうど真ん中まできたので、ここらで一休みして気分転換に、精油やエッセンスを買うときに注意しなければならないことをいつくか挙げてみました。このシリーズは50音順で書いていきます。

 イランイラン(Cananga odorata)油

  バンレイシ科の木本の花を蒸留して抽出する精油。
  この木の花を早朝摘んだものを蒸留する。レユニオン島、コモロ島、フィリピン、インドネシア原産。現在はほとんどマダガスカルで生産されている。
 
 ・主要成分(%で示す)
  ゲルマクレンD            5〜10%
  リナロール              2〜19%
  p-クレシル-メチル-エーテル(PCME) 0.5〜16.5%
  ベンジルアセテート          3〜25%
  ベンジルベンゾエート         2〜10%
  ゲラニルアセテート          3〜10%
  β-カリオフィレン           1%
 
 最初に蒸留抽出されるエクストラグレードのイランイラン油は、ほかの各種グレードのイランイラン油よりも、ベンジルアセテート分とp-クレシル-メチル-エーテル(PCME)分を多量に含み、反対にセスキテルペン類の含有量は比較的低い。しかし、この比率はその蒸留のつど大きく変化するので、提供業者同士間でのそれらの比率の差をきちんと示すことはムリである。
 イランイランの花は、そのまま何回も蒸留されるが、それぞれの成分の割合は、大きく異なっている。当然、香りも変化する。
 
 この精油が何度めの蒸留でとったものかによって、精油の品質は高いものから低いものになっていく。最初に抽出されるいちばん高価な留分は、もっとも抽出時間が短く、3時間ほどである。これをエクストラシュペリアーオイルと呼ぶ。さらにまた時間をかけてとるのがエクストラオイル(グレード1)といわれるものである。そしてさらに30分強かけて抽出するものがグレード2のオイル、そして最後にさらに16時間もついやしてとるのがグレード3のオイルである。最高品質のエクストラシュペリアーオイルが最も薬理効果が高いのは言うまでもない。
このグレードの低いイランイラン油は、エクストラシュペリアー、エクストラの各精油の増量剤としてよく使用される。ガージャンバルサム油も増量剤として使われるが、これはα-グルユネンがあることで、検査すればそれとすぐわかる。偽和(要するにニセモノをつくること)は、安物のオイルに合成化学物質のバニリン、p-クレシル-メチル-エーテル、メチルベンゾエート、ゲラニオール、イソゲラニオール、イソサフロール、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコール、ベンジルプロピオネート、シンナメート、アニシルアセテート、アニシルアルコール、コバイバ油、ペルーバルサム油その他の天然精油などを、どしどし添加して行われる。安物のイランイラン油には、アロマテラピー効果などを期待するほうが愚かである。第一、その香り自体、下品そのもので、こんなものを用いてつくった香水や香粧品などを嗅いでいると、私などは吐きけを催し、卒倒しそうになってくる。残念ながら市販の「イランイラン油」はほとんどこのようなニセモノである。
最高級のイランイラン油ならばだが、鎮痙作用、抗菌作用、抗真菌作用などがある。さらに、その『催淫作用』は有名だ。 これは脳に影響を与えることで、CNV(随伴性陰性変動)のデータの観察によっても確かめられている。したがって、この精油もローズマリー油同様に脳の老化を遅らせる効用もあるのではないか。
 
付け加えると、これからシリーズ的に各種の精油をご紹介するが、お読みになる方には「すべての希望を捨てよ」といいたくなる。つくづくこの業界の人間には、安い原価でつくったニセモノを高く他人に売りつける業者が多いと感じないわけにいかない。精油を見たらニセモノと思え、といわざるを得ない、と悲しい気持ちになる。ただまあ、香料用だと言われれば仕方ないが。
 
ルネ=モーリス・ガットフォセのころはもとより、あるいはジャン・バルネ博士の時代でも、今日にくらべれば、偽和の技術は幼稚であったからこそ「アロマテラピー」などというものを考えることができたのだと思う。
ロシアから精油に合成アルデヒドを加える技術をもたらし、「シャネルの5番」をつくったエルネスト・ボーに呪いあれ!と叫びたくなる。もちろんこれは、アロマテラピーの観点から見れば、ということである。

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