2013年11月13日水曜日

精油の化学④ アズレン類およびセスキテルペン類

 ◎アズレン類およびセスキテルペン類
 
  ・効果① ー 抗アレルギー作用
     ② ー 抗炎症・鎮静作用
     ③ ー 体温低下作用
     ④ ー 静脈活性化作用
 
 セスキテルペン類に属するアズレン類は、それを含む精油に多少ともブルーの色をつける。しかし、これは時間の経過とともに退色していく。
 
 アズレン類を多く含有する精油
  セロリ(Apium graveolens)油
   セリ科草本のセロリの種子を蒸留してとったこの精油は、セスキテルペン類を40%以上も含む。種子をつけていないスウィートセロリ(A. graveolens var. dulce)の全草から抽出したスウィートセロリ油もある。これも多量のセスキテルペンを含有する。
  アーテミジア(Artemisia arborescens)油
   キク科の草本のアーテミジアの葉または花の咲いた先端部分を蒸留抽出した精油で、セスキテルペン類のカマズレンとジヒドロカマズレンとをそれぞれ相当多量に含む(産地により、その量はかなり差がある)。
  イランイラン(Cananga odorata)油
   バンレイシ科のこの木本の花を蒸留(数回にわたって蒸留してとる。最初に蒸留したものが最高級品で、香りもよい。あとから蒸留したものは、それの増量剤として用いる)してとった精油。
  ジャーマンカモミール(Matricaria recutita)油
   キク科の一年草のジャーマンカモミールの花頭を蒸留した精油。カマズレン(カマズレンは、カモミールのアズレンの意)、ジヒドロカマズレンをそれぞれ相当多く含有する。
  セイロンシナモン(Cinnamomum zeylanicum)油
   クスノキ科の木本の樹皮と葉とからとる精油であるが、セスキテルペン類を多く含むのは、葉由来の精油である。
  ユーカリ(Eucalyptus globulus)油
   フトモモ科の大高木の葉から抽出した精油。
  グアイヤック(Guajacum officinalis)油
   ハマビシ科の木本の木部とオレオレジン(樹脂)とから蒸留抽出した精油。
  ホップ(Humulus lupulus)油
   アサ科のつる性草本の毬果から抽出した精油。β-カリオフィレンおよびα-フムレンの両セスキテルペンが60%も含まれている。
  真正ラベンダー(Lavandula angustifolia)油
   シソ科の小低木の花の咲いた先端部分から蒸留した精油。
   セスキテルペン類としてはβ-カリオフィレン、β-ファルネセンを含有。
  レモンバーベナ(Lippia citriodora)油
   クマツヅラ科の低木の葉・小枝から抽出した精油。セスキテルペン類を18%以上含む。
  ニアウリ(Melaleuca quinquenervia cineolifera)油
   フトモモ科の木本の葉・小枝から抽出する精油。
   β-カリオフィレン、アロマデンドレンなどのセスキテルペン類に富む。
  スコッチパイン(Pinus sylvestris)油
   マツ科の木本、スコッチパインの針葉を蒸留して抽出する。セスキテルペンとしては、ロンギフォレンを含んでいる。
  ウィンターセーボリー(Satureja montana)油
   シソ科の小低木。近縁種にサマーセーボリー(Satureja hortensis)があり、いずれも香味植物としてヨーロッパ各地で愛用されてきた。これらは薬用植物として古代より有名。これのカルバクロールケモタイプがとくに有用(正式学名はSatureja montana ssp. montana carvacrolifera)。この花の咲いた先端部分を蒸留した精油。セスキテルペン類としては、β-カリオフィレン、α-フムレン、アロマデンドレン、β-ビサボレン、αおよびγ-カジネン、カラコレンを含む。
  ジンジャー(Zingiber officinalis)油
   ショウガ科の草本。根茎を利用する薬用植物として、東洋でも西洋でもひろく親しまれてきたことで有名(中国生薬名は生畺〔しょうきょう〕)。この根茎から蒸留抽出した精油。
 
  主要なアズレン類(いずれもセスキテルペンに属する)
  アロマデンドレン   ゲルマクレン
  アズレン       フムレン
  ビサボレン      ロンギフォレン
  カジネン       フェランドレン
  カラメネン      セリネン
  カリオフィレン    ビリジフロレン
  カマズレン      ジンギベレン
  グアイアズレン 

2013年11月6日水曜日

精油の化学③ アルデヒド類

 ◎アルデヒド類

  ・効果① ー 抗炎症作用
     ② ー 抗感染作用・不安緩解作用
     ③ ー 結石破砕作用
     ④ ー 体温降下作用・免疫力刺激強化作用・抗アレルギー作用

 アルデヒド類は、注意を要する。これらには「刺激作用」の強いものがあるためである。とくにセイロンシナモン(Cinnamomum zeylanicum)の樹皮から抽出した精油が含むシンナムアルデヒドは、強い刺激力がある。

 アルデヒド類を多く含有する精油ー
  セイロンシナモン(Cinnamomum zeylanicum)油
   クスノキ科の木本の樹皮から抽出した精油(シンナムアルデヒドを63〜76%も含む)
  クミン(Cuminum cyminum)油
   セリ科の草本クミンの葉からとる精油で、アルデヒド類を32%まで含む。
  ウェストインディアン レモングラス(Cymbopogon citratus)油
   イネ科の草本ウェストインディアン レモングラスの全草からとった精油には、85%もの大量のアルデヒド類が含まれる。
  レモンユーカリ(Eucalyptus citriodora)油
   オーストラリアとその周辺原産のフトモモ科の高木の葉から蒸留した精油で、これのシトロネラール ケモタイプ由来の精油は80%ものアルデヒドを含む。
  メリッサ(Melissa officinalis)油
   シソ科の草本メリッサ(レモンバームとも呼ぶ)。真正のメリッサ油は、まず入手不可能。市販の「メリッサ油」と称するものの99%は、レモングラスなど数種のハーブや化学合成物質をまぜたインチキ品と覚悟されたい。真正メリッサ油の含有アルデヒド類の全量も、15%ぐらいである。
   真正メリッサ油の価格はピュアなバラ精油と同程度の値段。すなわち同じ重量の黄金と同じ価格である。安い真正メリッサ油などというものは、絶対に存在しない。

  主要なアルデヒド類
   アニスアルデヒド
   ベンズアルデヒド
   シンナムアルデヒド
   シトラール
   シトロネラール
   ゲラニアール
   ミルテナール
   ネラール

2013年11月2日土曜日

精油の化学② モノテルペン・セスキテルペンアルコール類

 今回は、精油の重要な成分である「モノテルペンアルコール」(あるいは「モノテルペノール」)、「セスキテルペンアルコール」(あるいはセスキテルペノール)に移ろう。
 
 ◎モノテルペンアルコール類
  ・効果① ー 抗感染作用
     ② ー 免疫力刺激強化作用
     ③ ー 神経強化作用(心身強壮剤となる)
     ④ ー 殺菌・殺真菌・殺ウイルスの各作用
 モノテルペンアルコール類は、フェノール類よりも作用が穏和だが、抗感染力はフェノール類におさおさ劣らないほどパワフルである。
 
モノテルペンアルコール類を多く含む精油類 ー 
 ボアドローズ、別名ローズウッド(Aniba parvifloraおよびA. rosaeodora:クスノキ科)の木部(ただし、これは絶滅が危惧される木本植物なので、いまでは入手不可能)からとれる精油
 イランイラン(Cananga odorata:バンレイシ科の木本)の花を蒸留して抽出した精油
 コリアンダー(Coriandrum sativum:セリ科の草本)の熟した果実を蒸留して抽出したものと、葉をそのまま蒸留してとったものとがある。前者のほうが断然、モノテルペンアルコールの含量が多い(60%〜80%にもなる!)。
 そのほかにも、ジンジャーグラス(Cymbopogon martinii:イネ科の草本)の全草を蒸留抽出した精油、セイロンシトロネラ(Cymbopogon nardus)の全草を蒸留してとった精油、ラバンジン(Lavandula hybrida、すなわちLavandula angustifolia〔真正ラベンダー〕とL. spica〔スパイクラベンダー〕との属間交雑種)からとった精油、ティートリー(フトモモ科の木本)の葉の精油(50%もこれを含む)、ペパーミント(シソ科の草本)の全草の精油(48%におよぶ含有量。この精油独特の清涼感は主としてこれに由来する)、「レタス型葉」バジル(Ocimum basilicum “feuilles de laitue”)の開花時の全草からとった精油(65%もの含量)、マージョラム(Origanum majorana:シソ科)の花の咲いた先端からとった精油(50%にも達する含量)、ローズゼラニウム(フウロソウ科の草本だが、ケモタイプまたはケモバーによって成分はいろいろに異なる。ローズゼラニウムの「ブルボン」ケモバーにいたっては、80%ものモノテルペンアルコールを含有する。)あと、シソ科の小低木Thymus vulgaris、つまりタイムの精油は、ケモタイプ(それが生育した土地により、いつも一定の特殊な化学構成を有するものをこう呼ぶ)が多く、ケモタイプごとにモノテルペンアルコール分の量が異なる。
 
 タイムのゲラニオールケモタイプの精油は、ほとんどがゲラニオール(これはモノテルペンアルコールの一種)だ。タイムのリナロールケモタイプは60%〜80%の含量である。ツヤノール-4-ケモタイプは、およそ50%の含量である。パラシメンケモタイプは、その含有量がぐんと落ちる。
 
 各種の精油が含むモノテルペンアルコール類
  ボルネオール、シトロネロール、クミノール、フェンコール、グアイヤオール、ゲラニオール、ラバンズロール、リナロール、メントール、ミルテノール、ネロール、ピペリトール、テルピネオール、ツヤノール、トランスピノカルベオール
 
 ◎セスキテルペンアルコール類(セスキはC15の意)
  ・効果① ー 免疫力刺激強化作用
     ② ー 心身強壮作用
 
 セスキテルペンアルコール類には、毒性を有するものはない。
 
 ◎セスキテルペンアルコール類を含有する精油
  キャラウェイ(Carum carvi)油
  セリ科の草本。その種子を蒸留してとったもの。
  ローマンカモミール(Chamaemelum nobile)油
  このキク科の草本の花頭を蒸留して抽出した精油。
  ジャーマンカモミール(Matricaria recutita)油
  このキク科の草本の花頭を蒸留した精油。
  キャロット油
  野菜のニンジンすなわちセリ科の草本Daucus carotaの種子を蒸留してとった精油。
  ユーカリ油
  オーストラリア原産のフトモモ科の大高木の葉を蒸留して抽出した精油。ユーカリには多数の変種があるが、ふつう精油用に使用されるのはEucalyptus globulus、次いでE. citriodoraなどである。
  ニアウリ(Melaleuca quinquenervia)油
  このフトモモ科の木本のシネオールケモタイプとネロリドールケモタイプの葉からとった精油。
  オリガヌム コンパクトゥム(Origanum compactum)油
  シソ科のこの草本の花の咲いた先端部分を蒸留した精油。
  マスティックス(Pistacia lentiscus)油
  このウルシ科の葉のついた小枝を蒸留して得た精油。
  パチュリ(Pogostemon patchuli)油
  このインド産のシソ科の花の咲いた全草を蒸留して得た精油。
  セージ(Salvia officinalis)油
  シソ科のこの小低木の花の咲いた先端部分を蒸留した精油。
  クラリセージ(Salvia sclarea)油
  シソ科のこの小低木の花の咲いた先端部分を蒸留してとった精油。
  サンダルウッド(Santalum album)油
  ビャクダン科の木本であるが、この木の最高の産地、インドのマイソール産の「真正」サンダルウッドは、犯罪行為スレスレのよほどの奥の手を使わなければ、入手不可能なのが現状である。
 
 ◎主要なセスキテルペンアルコール類

  アンテモール、ビサボロール、カロトール、カルベオール、セドロール、ダウコール、グロブロール、オクテン-3-オール、パチュロール、サルビオール、サンタロール、スクラレオール、ビリジフロール 

2013年10月30日水曜日

精油の化学① 酸類

 前回は、このブログをご覧になっている方(つまり、日本のアロマ界の現状を憂えている方がたととらせていただいてもよいだろう)の人数が、2万人の大台に載ったことを記念して書いたつもりである。異論反論、大歓迎。望むところだ。
 
 今回は、アロマテラピーに不可欠な精油の化学の知識の一端について述べさせて頂こうと思う。
 アロマテラピー界の現状につき、日本人の「民度」の低さについて悲憤慷慨(ひふんこうがい)するのも結構だが、やはり、アロマテラピーの化学ないし科学についての知識がなくては、万事お話にならない。その世界の改革も革新もネオアロマテラピーもあったものではないからだ。
 
 いま、アロマテラピー用に市販されている精油は、多くみつもって100種にものぼるらしい。しかし、ふつうのアロマテラピーでは、それよりずっと少数の精油しか使用されていない。だから、それを使う立場の人びとは、それらの化学的構成、ならびにそれらの心身にたいする作用などについては、比較的学びやすいし覚えやすい。
 
 本稿では、そうした市販の精油について、その主要な化学的成分類の、それぞれの特異な心身にたいする作用についてまとめてみた。ただし、注意すべきことは、ある精油の効用をそれが含有する数種の化学成分の働きのみに帰してこと足れりとする態度は、厳につつしまなければならないという事実である。それぞれの成分の相乗作用、その他の稀少成分の作用もしっかり把握しなくてはいけない。
 
 日本のアロマセラピストは、法律に定められた「医業」は行えない。しかし、フランスの医師資格をもつアロマテラピー研究家たち、たとえばDuraffourd(デュラフール)、Lapraz(ラプラス)そして故ジャン・バルネなどの各博士は、精油の医薬としての効果を丹念に調べ、医学の新しい地平を拓(ひら)いたし、いまも開拓しつつある。
 
 こうした研究家たちの得た知識も、たとえ実地に医業にあたらないわが国のセラピストであろうとも、それも念頭においてトリートメントにあたれば、過誤をおこすことなくしっかりした成果があげられよう。したがって、ここでは過度に専門に走らず、基本的にアロマセラピストの方がたが知っておいたほうがよいと私が考えた「精油の化学」的知識を述べさせて頂こうと思う。
 
 以下あげる精油のいろいろな成分は、みんなC(炭素)、H(水素)、O(酸素)の三種類の元素だけからできている。ただし、テルペン類はC、Hのみからなる。
 
 ◎酸 類
  ・効果① ー 非常に強力な抗炎症作用
     ② ー 体温低下作用
     ③ ー 血圧降下(降圧)作用 
 酸類は、少量成分だが、強い効力を示す(エーテル・エステルの形で)。たいてい何か他の成分と結びついた形態で精油中に存在する。
 
  ・酸類が比較的多い精油 ー  クローブ(Eugenia caryophyllata)油。フトモモ科の木本の花芽から抽出した精油 
  フレグラントウィンターグリーン(Gaultheria fragrantissima)油。ツツジ科の木本の葉からとった精油。メチルサリチレートの含有量が、きわめて多い。 
  ジュニパー(Juniperus communis)油。ヒノキ科の木本の液果のついた小枝を蒸留して抽出した精油。カンフォレン酸の含有量が多い。ただし、変種によってはクマリン酸(ウンベリフェロン)をかなり多量に含むものもある。 
  フウロソウ科のゼラニウム(Pelargonium graveolens)油。ローズゼラニウムとしていろいろな変種がある。いずれもオキシド類の形で酸類を含有する。

各種の精油が含む酸類
 酢酸、カンフォネル酸、シトロネル酸、蟻酸、ゲラニル酸、ピン酸
(Pinus sylvestris〔スコッチパイン〕の針葉にとくに多い)、サリチル酸

2013年10月29日火曜日

これまでの『R林太郎語録』をふり返って

 私は、この自分の名をおこがましくもつけた「語録」を、香りについて、アロマテラピーについて、思いつくままのこと、思い出すままのことを、順不同に書きつらねてきた。アロマテラピーという歴史の浅い自然療法を、日本に最初に体系的に紹介したものとして、少しでも多くの方がたに、つれづれなるままに記した随想のかたちで真実を、アロマテラピーの真実を、 知っていただくことを願ったからである。

 2013年の5月1日に、この私は『誰も言わなかったアロマテラピーの本質』という新しい本を出して、いまのアロマテラピーの、ことに日本で行われているアロマテラピーの、さまざまな問題点をとりあげて論じた。しかし、いろいろな方面からの悪らつな妨害によって、この本は幻となってしまった。

 でも、アマゾンとか楽天とかで、この本の一部が売られると、あっという間に売り切れた。この新刊をお読み下さったアロマテラピーの権威である、藤田忠男博士は、私には身に余る賛辞をお寄せ下さった。そして、「高山氏のこの本は、高度な文化批評である」とまで言って下さった。これにより、この新刊にたいしてケチをつけたまことにIQのお低い方がた(誰かはほぼわかっている)の罵詈雑言(ばりぞうごん)は、すべてケシ飛んでしまった。藤田先生のお考えは以下の原文もあわせてお読み頂きたい。

〔高山林太郎氏の著作の高度な文化批評〕
http://ameblo.jp/forestwalking/entry-11814714388.html

 この「語録」は、すでに2万人以上の人びとが読んで下さっている。藤田忠男博士は、「日本のアロマテラピー業界は死に体」とまで極言しておられる。博士におことばを返すようで申しわけないが、私はアロマテラピーは、確かに一時の勢いは落ちたかも知れないと思うけれども(事実、英国のアロマラピー界の権威〔とは笑わせる〕、ロバート・ティスランドが日本にまで来て、泣き言をならべていた)、本当に正しく、科学的に、バッチのフラワーレメディーズだのホメオパシーだのといったインチキ自然療法と「アロマテラピー関係者」たちがキッパリ縁を絶って、少しずつでも、精油の作用機序を、その相乗作用を、クェンチング効果を明らかにしていき、かつ、英国人、フランス人、黒人などと、体質も皮膚の質も、そのほかの各種の点でも異なった部分が多々ある日本人の(厳密には同じ日本人といっても、古来からの青森人、アイヌ人、沖縄人などは、それぞれみんな体質などが異なる)ためのアロマテラピーを構築すれば、一時のお祭り騒ぎ的な、地に足がつかない、ミラージュ的、蜃気楼(しんきろう)的なアロマテラピーを、しっかりした根拠に基き、万人を納得させ得る新たなアロマテラピー(ネオアロマテラピーとでも命名しようか)に生まれ変らせることができる、と私は確信する。

 この文を読んでおられる、だいたいあなたほどの怜悧(れいり)で、ことばとしてダブるけれども知性と理性とを兼ね備えたお方が、会員から毎年毎年、金をまきあげる悪知恵しかない、もっともらしい日本アロマ○○協会などに加わっているのはどうしてか。そんな「協会」は公共的法人のくせに、7億から9億の金を金庫に唸らせ、協会の幹部どもは、「バカ会員めらが」と、ハラの中でセセラ笑っている。

 めざめて下さい、そこのあなた。あなたを、あなたの財布をいろいろなインチキアロマ協会が、インチキアロマスクールが、インチキアロマサロンがねらっている。オレオレ詐欺師どもよりタチが悪い奴らだ。あなたは認知症のご老体ではないはずだ。しかし、悪党は、さまざまな手を使って人の良い人間をダマして金をまきあげるスベを心得ている。

 どうか、くどいようだが、前記の悪人たちの餌食にならないように、ごくふつうの常識を働かせ、その悪人どもの口車に乗せられないように努めることだ。ダマされた人間も、またべつの人間をダマして金をもうけるのが、このネズミ講的組織のもっともタチの悪いところだ。しかもウブな若い女性などに「私は世間に役立つことをしているのだ」と信じこませてしまうオウム的洗脳組織だということを、心にシッカリ刻みこんでほしい。それが、私の心からの願いである。

2013年10月17日木曜日

人間の体臭について(続き)

現在では、体臭イコール悪いものという観念が横行している。むかしの人間(原人・旧人類といわれるきわめて古い時代の人種)は、確かに体臭がきわめて強かったと思う。

集団生活をしているハチ・アリなどは、巣の見張り番のハチ・アリなどが、敵の接近や攻撃などを仲間に知らせるために、独特の体臭を放って、スピーディーに群れの全員にその危険を知らせる。
すると、巣を防衛し、敵を撃退する役目の昆虫は、さっとその態勢をととのえ、必要とあらば敵を積極的に攻撃する。繁殖期などには、さらに敏活な行動をとる。

いまから20万年から2万数千年の間に、世界の各地で暮らしていた人種の一つに、ネアンデルタール人(Homo neandelthalensis)という旧人がいる。むろん、火を使い、旧石器を用いて、それなりの文化を築いていた。 仲間が死ねば埋葬し、花をそこに供えたりもした。

ネアンデルタール人は、身長が165cmぐらいなので、その男性にワイシャツを着せ、ネクタイを締めさせ、スーツの上下を着用させ、靴をはかせて公園のベンチにでも座らせたら、そばを通る人は、「こりゃ何人だろう。毛色の変わった人だなあ」と思うだけで、とくに気にもとめないのではないかと考えられる。

しかし、ネアンデルタール人は、現代の人間、すなわちホモ・サピエンス(Homo sapiens)と大きくちがったところがあったらしい。それは、頭蓋骨(とうがいこつ)の研究から、彼らはどうもコトバをうまく話せなかったようなのだ。と、いうことは、当然、脳の言語を司る分野が未発達だというわけであり、コトバを使用してモノを考える私たち現代人と世界の捉え方が相当異なっていたと思われる。

ネアンダルタール人も、数十人ないし、数百人のグループをつくって、狩などをして生活していたらしい。群のリーダーは、気候の変化、季節の移り変わりなどに応じて、各地を転々として、食物を求めて歩いた。しかし、ネアンデルタール人は、ついに弓矢を発明できなかった。かりに、群の誰かがそれをふと思いついても、唸り声のような声音では、その知恵を仲間全体にうまく伝えて、狩猟文化を飛躍的に発展させることができなかったのではないだろうか。


ここに登場してきたのが新人、すなわち現代人のホモ・サピエンスの先祖ではないか。
彼らは幼稚ながらコトバをいろいろと用い、弓矢をたくみにあやつって、さまざまな動物を狩ることができた。ネアンデルタール人は、どうなったろうか。ホモ・サピエンスに平和裏に吸収されたと想定する学者もいる。そういう学者は、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスとのへだたりはさして大きくないとして、ネアンデルタール人の学名を(Homo sapiens var.neandelthalensis)と書いたりする。var.は、ラテン語のワリエタリスの略記で、その変種ということである。あるいは、ホモ・サピエンスに暴力的に絶滅させられた可能性も否定できない。霊長類のなかで、もっとも凶暴なのは、現代人ホモ・サピエンスであることは、その後のホモ・サピエンスの歴史から如実に証明されているところだからだ。

ところで、ネアンデルタール人のリーダーがグループのメンバーをひきつれて、高い崖の上に立ったとする。と、リーダーは「これは危険だ! ストップ!」ということを群れの人間たちに伝えるのに、吠えるような声をあげるとともに、強い体臭を放ってみんなにその危険さを伝えたのではないだろうか。そうすれば、その緊急性をスピーディーに群れのメンバー一同に伝えることができたと思われる。

そういうことに役立ったにちがいないと考えられる体験を、私自身したことがある。フランス南部のオートプロヴァンスに行ったとき、フランスにまで延びているアルプスの山腹を車でえっちらおっちら登っていた時だ。多分、海抜800メートルくらいのところで車を降りて、新鮮な空気を吸い、ふと足元を見た。足がふらついた。

私はかなり高所恐怖症の気(け)がある。

足元に600mくらいの谷が口を開けている。いまにも吸い込まれそうだ。思わずめまいがした。そのとき、私は体臭がさっと変わるのを感じた。そして、睾丸がキーンと冷えた。そして、女性だったらこんなときどこが冷えるのだろうかとバカなことを連想した。

こんな場合に遭遇した旧人のリーダーは、体臭を強烈に発して、危険性を知らせたに違いないと考えたのは、そのときだった。ネアンダルタール人にとって、(あるいはそのほかの旧人にとって)、こんな瞬間の緊急性を知らせるアラームとして、におい、異臭はきわめて有効だったろう。

また、私は、東京の新宿駅に立ったとき、微かながら異様な焦げ臭さを嗅ぎつけて不安におそわれ、駅員にわけを尋ねたことがある。原因は、駅から1km近く離れたところで発生したボヤで、もう鎮火したとのことだった。森林や草原などの火災では猛獣でもひたすら逃げるしかない。私もこの瞬間、一種の先祖帰りをしたのだろう。

しかし、コンスタントに先祖帰りをしている人間もいる。あるとき電車に乗ったら、隣の席の長袖の女性が、強烈な体臭を出していた。私は、思わずその若い女性の顔を見つめてしまった。悪いことをした。知らぬふりをきめこんでいればよかったのに。女性は悲しそうな顔をして、席を立って電車を降りた。女性は私がその顔を見つめたことが原因で下車したのか、それともそこが目的の駅だったのか、いまだにわからない。でも、ただただ、後悔の念がいつまでも残ってしまった。

人間の体臭について

ジャン・バルネ博士は、著書にこう書いている。

「芳香浴というものを、当世風の補足的な発明のように考えるのはまちがっている。
事実、芳香浴はいつの時代にも人びとの人気を得てきたのである。

しかし、フランスでは衛生とおしゃれの基本的な観念の欠如から、そうしたことが行われず、不当に判断されてきた時代がいくつかあったことは確かである。

それは14世紀[ルネサンスの時代]、ついでアンリ四世[16~17世紀はじめ]の治世であった。ぞっとするような汚い『善良王(ボン・ロア)』のこの時代は、とくに垢(あか)とノミ・シラミの治世であった。人びとはボリボリ自分の体をかいて体をきれいにし、美女は墓場[フランスでは土葬である]のような悪臭をさせ、貴族たちは『腋の下を少しすえ臭くし、足をむっと臭くしていた』。

ルイ一四世の時代も同様だった(何という幻滅だろう!)」。


そういえば、ミラノ公国のスフォルツァ公に仕えていたレオナルド・ダ・ヴィンチは、この宮廷で美女の絵を描いたりイベントで貴族たちを楽しませたりしていたが、彼は、主君スフォルツァ公に、「みんなが飼っている動物で、死ねば死ぬほど嬉しくなるものは、何でございましょう」というナゾをかけたりした。答えは「シラミ」である。ルネサンスのころのイタリアのいろいろな宮廷、宮殿などの貴紳、美姫たちもフランスと同様、垢だらけで、ノミ・シラミの跳梁(ちょうりょう)に身を委ねていたに相違ない。今日のように、人びとは、貴賎を問わず、沐浴、シャワーなどで体を洗うことがなく、むっとした体臭を発していた。

日本でも、光源氏も紫の上も(これはフィクション上の人物だが)アバタづらで、むっと体臭をあたりにふりまいていたかと考えると、ゲッソリするのと同じことだ。でも、今日の感覚でむかしの人を論じてはなるまい。

ただ、『竹取物語』のかぐや姫が、 テレビドラマの水戸黄門に登場する美しい女優のように入浴するシーンを披露するとなれば、ちょっと見てみたいという男性は少なくないだろう(私は別ですよ)。

しかし、あの本を何度読んだって、彼女が竹から出現して以降、月に帰るまで、一度も沐浴したという記述がない。さぞ、臭かったでござんしょう。

でも、江戸時代になると、日本人の多くはひんぱんに沐浴するようになる。考えてみれば、日本ではそのむかしでも温泉がたくさんあったのだから、これを利用した人びとはかなりいただろう。当時、世界一の人口を抱える都市だった江戸には銭湯がたくさんできて、江戸っ子は、乞食以外は毎日、沐浴をした。

電燈などおよそない、薄暗い浴場だったから、男女が混浴したころもあった。石けんがない時代で、人びとはぬか袋で体をこすって洗った。どの程度の洗浄効果があったのだろう。

江戸時代の日本人は、清潔好きだった。反面、人前で肌を見せるのは平気だった。東京・新宿に四谷見附(よつやみつけ)という、役人が常駐する番所があった(もちろん、見附は江戸四方にたくさんあったが)。この番所は、もとより将軍様のお膝元に怪しい人間が近寄らぬように当局者が目を光らせているところだが、男がすっぱだかでこの番所を通っても、その男が肩に一枚、手ぬぐいを載せているかぎり、役人は何もとがめずに、江戸の御府内に通した。いまでは、こうはいかないだろう。

私が中学生ごろまで、電車の座席で乳児に乳房をあらわにして乳を与える女性はザラにいたし、男もさっぱり目をくれなかった。暑い夏には、通行人など気にもせずに平気で女性もたらいで水浴びをしたし、それをとやかくいう人間など、誰ひとりいなかった。

私の小学校の頃の同級生など、六年生のとき、同じクラスの女の子の家に遊びに行き、同じ部屋で一緒に寝たそうだ。このことを、どちらの親も、何一つ問題視しなかったし、事実、何事もおきなかった。現在だったら、絶対に、親はこんなことは許さないだろう。

いまの時代は、インフラは整備され、水洗トイレはいきわたり、人びとの衛生観念も発達した。私がこどものころは、男も女も平気で立小便をした(若い娘はさすがにそんなことは人目につくところではしなかったが)。

しかし、私は思う。確かに環境はきれいになり、人びとの暮らしは「衛生的」になった。

でも私たちは、衛生的に進歩して本当にキレイになったのだろうか。人工的なにおい、香りで天然のものを隠し、私たちの本能を人為的に麻痺させてしまっている。これが、人間として、本当にあるべき姿なのだろうか、と。

また、欧米人のマネを一から十まですることが、すべて正しいのだろうか。

アロマテラピーは、人間の感覚(それも複数の)を陶酔させ、人間の心身を自然なかたちで健やかに導く方法である。だとしたら、日本人は、日本人向けのアロマテラピーを創造し、私たちの感覚にマッチした、そして私たちの心身の真のありようを考えるべきではないだろうか。

日本人はヨーロッパ人と同じ服装をすることはできる。でも私たちの長い歴史がつちかってきた精神と感覚まで欧風にする必要があるだろうか。また、できるだろうか。ましてや
肉体の中身まで、腸の長さまで100%ヨーロッパ人なみにすることなどできようはずもない。

このことをもう一度考えてみよう。