2013年12月24日火曜日

カモミールローマン・カモミールジャーマン| 精油を買うときには注意して!③

 カモミール(ローマン)(Chamaemelum nobile)油
  カモマイルとも発音する(英国ではこれがふつう。英国ロンドン付近が原産地とは意外な感じもする)。しかし、米国人の多くはカモミールと呼ぶようだ。カモミールを和製英語とカンちがいをしていたさる博学の方がおられたので念のため。
  このハーブは江戸時代から知られており、蘭学者たちはこれをオランダ語のKamille(カミッレと発音する)を音写して「カミツレ」と書いた。江戸時代には促音を現代のように小さい「ッ」で表わすことを人びとはしなかったので、こう蘭学者たちは表記した。元の正確な発音を知らない人びとは、これを文字どおり「カ・ミ・ツ・レ」と読んだ。のちに、それがさらに変化して「カミルレ」などと記されるようになった。
また、これをカモミラなどという人もいる。
 
 ・主要成分(%で示す)
  メチル-アンゲレート            16%
  3-メチルペンチルイソブチレート      12%
  2-メチルブチルアンゲレート        4〜25%
  メチル-アンゲレート-3-メチルペンチル    16%
  イソブチレート               12%
 
 カモミール(ジャーマン)(Matricaria recutita)油
  シス-スピロエーテル            1%
  カマズレン                 1〜18%
  α-ビサボロールオキシドB           11%
  α-ビサボロールオキシドA           9〜23%
  α-ビサボロール              10%
  ファルネセン               15〜28%
 
 一般にジャーマンカモミール油のほうが高価。濃青色の青インクのような色。ただし、これは時間の経過とともに、色が薄れていく。この色は、これに含まれるカマズレン分のためである。ジャーマンカモミールの原産地はその名の通りドイツ辺りが原産地である。
 
 ・偽和の問題
  ジャーマンカモミール油として売られているものには、合成したカマズレンを入れた製品がある。こうすると、天然のものよりずっと安あがりにできるからだ。一部の業者はジャーマンカモミールから溶剤でアブソリュートを抽出している。すると非常に粘性が高いアブソリュートがとれる(この溶剤は人体に危険をもたらす)。そして、ここにうんと安ものの化学合成物質類を加えると、もっともらしいジャーマンカモミール油が多量にできあがるというわけである。また、良心的なジャーマンカモミール油も、棚おき期間が長いと、さきにものべたようにカマズレンが変化して、精油はブルーから濃緑色に変ったり、茶色になったりする。こうした加齢油は当然ながら薬効がぐんと落ちる。しかし、精油のびんが褐色だとなかなかその変りようがわからない。何とかして中身を見せてもらうように、販売者と交渉するしか方法がないが、これは出来ない相談かもしれない。
 
 ジャーマンカモミールは、現在アルゼンチンで野草としてたくさん生えていて、採取する人もいない。もったいない気もする。これには、こんなわけがある。第二次大戦でナチスを支持したドイツ人(民間人のみならず軍関係者も含む)をローマ教皇庁(教皇庁が戦時中、600万のユダヤ人その他の大虐殺を黙認し、ナチスに実質的に協力したことを忘れてはならない)がこっそり援助し、アイヒマン(ナチスのユダヤ人絶滅計画の実行責任者)を含む多くの旧ナチス関係者を助けて、金銭・旅券・難民証まで与えて、彼らを、親ナチス派のペロン大統領が君臨していた南米アルゼンチンに逃げこませて、彼らを保護させた。
アルゼンチンはカトリックが国教で、国民の95%がカトリックの信者だ。ローマ教皇猊下(げいか)の仰せとあらば、大統領は何でもした。
このナチスの残党どもの旅行カバンのなかにはジャーマンカモミールの種子が知らぬ間にたくさん入っていた。これが、こぼれこぼれてアルゼンチンの山野にひろく一面に花を咲かせ、はしなくもナチスの言語に絶する悪業のしるしを残したということである。風にそよぐジャーマンカモミールの花には何の罪もないのだが。もし芭蕉がそうした事情を脳裏に浮かべつつ、この風景を眺めたら、どんな句を作っただろうか。
 
 ・効果
  ジャーマンカモミール油は、含有するα-ビサボロールとビサボロールAおよびBのため、またシス-スピロエーテルのためにモルモットの回腸で鎮痙作用を示すことがわかっており、ローマンカモミール油にも同様の効果がある。
 
  抗菌作用
   ジャーマン・ローマンともにこの作用があることが判明しているが、その力は弱い。抗真菌作用もあるが、これも特筆するほどでない。抗酸化作用がジャーマンには認められる(ローマンにはない)。ジャーマンにもローマンにも鎮静作用があり、これはCNV(随伴性陰性変動)によってわかる。
 

 

 なお、ジャーマンもローマンも比較的、精油としては高価だが、ヨーロッパではこれらのカモミールはハーバルティーとして多く使われるためだ。ローマンのハーバルティーには鎮静効果があり、ジャーマンのハーバルティーには抗炎症作用があるので、これで患部に湿布すると有効。また、寝つきの悪い人間にはどちらのカモミールティーも卓効がある。マリア・リズ=バルチン博士によると、12人の不眠症の人間にこれらのティーを飲ませたところ、10人までが10分後に入眠した。そして、深い眠りが90分あまりもつづいたそうである。 

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